上司の細かい指示を受けずに仕事を進めることができる「裁量労働制」。決められた成果をあげれば、勤務時間を自由に決められるはずだが、実際には定時出社を求められることも多く、趣旨に合わない使われ方が横行していることが判明した。
裁量労働制で働く3900人を対象に、労働政策研究・研修機構が出退勤時間について尋ねたところ、「一律の出退勤時刻がある」と回答した人が44%にのぼった。「決められた時間内にいれば出退勤時刻は自由」は14%、「出勤するかしないかは自由」は2%しかいなかった。
遅刻すると賃金カット。残業時間も通常より長く
同じく裁量労働制の人に、定時より遅れて出社した場合、会社にどのような対応を取られるか尋ねたところ、「上司に口頭で注意される」が最も多く43%。「勤務評定に反映される」が24%、「賃金がカットされる」も11%ある。「場合によっては懲戒処分も科される」と回答した人も5%いた。
裁量労働制の概念には、定時も遅刻もないはずだが…。その一方で、1か月の実労働時間が200時間以上250時間未満の人の割合は、企画業務型では38.6%、専門業務型では40.9%にのぼり、通常の労働時間制の26.5%を大きく上回っている。
仮に週40時間、月4週とすると労働時間は160時間となるが、裁量労働制の方が「月の残業時間が40~90時間」の人の割合が高いことになる。成果に基づき評価する裁量労働制は、同じ給与で労働時間が短くなってもおかしくない。
しかしこの調査結果からは、定時出社を求めながら、実質的に「固定労働時間制」のような運用をされている実態が垣間見られる。ツイッターには、「今の日本社会には裁量労働制は馴染まないんだよ」という投稿も。横並び意識の強い職場には、向いていないのか。
キャリコネの口コミには、「名ばかり裁量労働制」のひどい事例が多数見られる。都内のウェブ制作会社に勤務するディレクターは、裁量労働制にもかかわらず会社から「定時前行動」を求められたと明かしている。
「休憩時間に学校のチャイムが鳴る。定時は9時~17時45分だったが、8時50分に来ないと遅刻扱い。さらに定時に帰れる状況だと全く無関係の他人の案件を手伝わされ、20時まで必ず働かされる」
導入前は「何時に来て何時に帰ってもいい」と言われていたが…
自分の職務を果たしていれば、何時に帰ってもいいのが裁量労働制なのに、これでは意味がない。都内のIT企業で働くプロジェクトリーダーも、こう憤る。
「入社後5年目からは雇用形態が一律裁量労働制となるが、朝は9時(の定時)出社が求められ、終電間際まで作業が強いられることがしょっちゅうある」
ある印刷機器メーカーでは、裁量労働制導入前は「何時に来て何時に帰ってもいい」などと利点を説明されていたが、実際に導入されてからは「そんな事が一切許されない空気になっています」。さらに見込み残業代以上の残業時間があり、割が合わないと嘆く。
生命保険会社で働くSEは、「残業代が発生しないのをいいことに、無理な量の仕事をやらされる」など、裁量労働制が悪用されると悲鳴をあげる。
「出社時間等についても細かく指示がある。裁量労働制と名ばかりで、個人の裁量は全くない。もう少しまともな労働環境を整えてくれないと、みんな壊れてしまう」
大手電機メーカー社員も、同様の会社のやり方を告発する。大手映画制作・配給会社で働く契約社員も、裁量労働制でかえって長時間労働が常態化しており「時給換算するとコンビニのバイト以下」になってしまうと投稿している。
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