2014年09月24日 18:21 弁護士ドットコム
神戸市長田区で、行方不明になっていた小学1年生の女児(6)が遺体で見つかった。兵庫県警は9月24日、近所に住む男性(47)を死体遺棄罪の容疑で逮捕した。
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報道によると、遺体が見つかったのは、女児の自宅から約100メートル離れた茂みの中。女児の遺体は切断されて、複数のポリ袋に分けて入れられていた。袋からは、女児が行方不明当時に着ていた衣類のほか、逮捕された男性名義の診察券やタバコの吸いがらが見つかったという。男性は警察の取調べに対して、黙秘しているということだ。
今回、男性は「死体遺棄罪」の疑いで逮捕されているが、それは、どのような罪なのだろうか。また、女児は亡くなっていたうえ、遺体が無残にもバラバラになっていたというが、なぜ「殺人罪」や「死体損壊罪」での逮捕ではなかったのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。
「死体遺棄罪は、死体をある場所から、別の場所に移して捨てたり、一般的な埋葬と言えない方法で土に埋めたりする犯罪です。
一方で、死体損壊罪は、死体を物理的に損傷・破壊するという犯罪です。
どちらの犯罪も、刑法190条(死体損壊等)という、同じ条文で規定されていて、法定刑も同じ『3年以下の懲役』です」
死体を別の場所に移すことと、死体をバラバラにすることでは、受ける印象がずいぶん違う。罪の重さに違いはないのだろうか?
「法定刑はあくまで、その範囲内の罰を与えるという決まりです。
一般的に、死体を別の所に移動させて埋めるよりも、死体をバラバラにしたほうが遺族に与える悲しみや社会に対する衝撃が大きいですね。
したがって、判決でもその部分が『情状面』として考慮され、実際に下される刑罰はその分、重くなる可能性が高いと思います」
それでは、なぜ今回、警察は男性をほかの容疑ではなくて、「死体遺棄罪」の容疑で逮捕したのだろうか?
「今ある証拠だけでは、死体遺棄の容疑でしか逮捕できないと判断したからでしょう。
現段階では、殺人罪や死体損壊罪について、男性と犯罪を結びつける証拠が、ほとんど集まっていないと考えられます。
そうした容疑で男性を逮捕するためには、凶器等の証拠や動機、男性の犯行があったと考えられる時間帯の足取りなどを集める必要があります。
そこで警察は、いったん死体遺棄で逮捕し、容疑が固まりしだい、ほかの容疑での再逮捕や起訴という流れにするのだと考えられます」
冨本弁護士はこのように指摘していた。
つまり、今後の捜査しだいでは、男性にかけられる「容疑」が増えていく可能性があるわけだ。しかし、少なくとも現時点においては、事件についてわかっていることが多いとはいえない。捜査の行く末について、慎重に見守っていく必要があるといえそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp