2014年09月24日 16:11 弁護士ドットコム
仕事に行きづまったとき、気分を変えるために「ちょっと一服」と喫煙室へ――。こうした「一服」がほかには替えられない、大事なリフレッシュの時間だと感じている喫煙者もいるだろう。
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しかし、タバコを吸わない人からは、喫煙者だけがこうした「タバコ休憩」をとることは不公平だという声もある。こうした声を気にしてか、ネットのあるQ&Aサイトには、愛煙家の1人から「業務時間中のタバコは休憩ですか?」という質問が寄せられている。
質問者は、タバコを吸っている時間の分だけ「休憩時間を短くしている」といい、「就業時間中にたばこを吸うことが休憩になるなら、トイレはどうなるのか」「トイレ休憩もタイムカードをきらなければならないのか」などと問いかけている。
業務時間中の「喫煙タイム」は、法的にいうと「休憩時間」なのだろうか。それとも・・・。労働問題にくわしい上林佑弁護士に聞いた。
「労働基準法34条1項は、『使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない』と規定しています。
この『休憩時間』とは、労働者が、労働から離れることを『権利として保障されている時間』を意味しており、その他の拘束時間は、労働時間として取り扱うこととされています(昭和22.9.13都道府県労働基準局長あて労働次官通達発基17号)。ですから、デスク前などにいて仕事の態勢にはあるけれども、単に作業をしていないような『手持ち時間』は、休憩時間には含まれません」
・・・ということは、席を外して上司の指示の来ないところへ行く、というのは、ほんの数分でも「休憩時間」に入るのだろうか。
「労働基準法第34条1項の休憩時間については、分割して付与してもよいとされています。ただ、どの程度、継続した時間を与えれば休憩時間といえるのかということに関しては、規定や行政解釈はありません。
たとえば、『ほんの数分』というのが、具体的には1、2分であるという場合、そのような短時間ではほとんど何もできず、自由に時間を利用することができないため、労働から解放されていると評価されない可能性はあります。しかし、数分であっても、『労働から完全に解放されていること』が保障されていれば、『休憩時間』といえるでしょう」
では、タバコ休憩も、れっきとした「休憩時間」になる、ということだろうか。
「はい。たとえば、喫煙室で一服するために席を外すことを会社が了解している場合について考えてみましょう。労働者が一服から戻ってくるまでは、特に業務上の指示等を受けることがなく、労働からの解放が保障されている場合には、法的には、タバコ休憩も『休憩時間』に該当すると評価し得ます。トイレ休憩も、同じと言えば同じでしょう」
しかし、タバコやトイレで、数分~10分程度の時間をいちいち管理するのは難しそうだ。
「会社がこのような細切れの時間を休憩時間であると考え、労働時間の管理を行うことは、大変な手間となります。そのため、現実にはこのような労働時間の管理は、多くの場合行われていないものと考えられます」
それをいいことに、タバコ休憩に30分以上もとるといったサボリ社員もいそうだが。
「そうですね。労働者は、勤務時間中、職務に専念する義務を負っています。喫煙するために無断で職場を離れることが多いなど、その行動が目に余るような場合には、職務専念義務違反を問われるでしょう。会社から注意・指導がなされたり、懲戒処分を受ける可能性もあります。喫煙する方は、会社の了解を得るなど、常識の範囲で行動していただくとよろしいかと思います」
結局は、タバコもトイレも、良識の範囲内で・・・ということだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上林 佑(かみばやし・ゆう)弁護士
仙台弁護士会所属。労働問題を中心に、債権回収、その他企業法務一般、交通事故、知的財産権等、広く取り扱っている。
事務所名:三島法律事務所