労働人口の減少が懸念される中で、政府は「女性の活躍促進」を政策として打ち出している。しかし現状では、女性に出産や育児、家事の負担が大きく掛かっており、そのためにキャリアを諦める女性も多い。
この問題を解決するためには、男性の育児・家事参加も考えられるが、男性側も長時間労働の問題を抱え、余裕があるとはいえない。そこで期待されているのが、ベビーシッターやハウスキーパーなどの「家事支援サービス」だ。政府からは、このようなサービスを利用した世帯に対し、税金を安くすべきという案も出ている。
イギリスでは託児所費用の70%が控除対象
複数のメディアによると、6月に政府が打ち出す新たな成長戦略に、「家事支援税制の導入」が提案されているという。この税制については、自民党の日本経済再生本部から2013年に出された中間提言でも触れられていた。
「先進国で広く採用されている、低所得の共稼ぎ世帯などにおける家事支援のための家庭内労働者に対する支出に係る税額控除制度を参考にしつつ、広く、働く世帯における就労支援制度の整備を、既存制度との整理を踏まえつつ、財源を含め検討する」
つまり共稼ぎ世帯において、ベビーシッターやメイド(家庭内労働者)を雇った際の支出を、税額から控除しようというわけだ。この「家庭内労働者に対する支出に係る税額控除制度」の例として、財務省主税局が作成した国際比較の表がある。
例えばイギリスでは、就労している一人親世帯または夫婦共働き世帯を対象に、保育士や託児所等に支払われる費用の70%が、勤労税額控除の給付額に加算される。
フランスでは、子どもが6歳未満の全世帯を対象に、保育士や託児所等に支払われる費用の50%を、給付付き税額控除としている。また、ベビーシッターやハウスキーパーなど家庭内労働者に支払われる費用も、要件なしで同じ率の控除を受けることができる。
この中間提言を取りまとめた塩崎恭久衆院議員は現代ビジネスで、女性の労働力率は30代前半が極端に低くなる「M字カーブ」の状態が長く続いており、この解消が「全員参加型社会」の実現には重要だとしている。
さらに日本では「家事」があまりにも蔑視されすぎていると苦言を呈し、外でお金を稼ぐ労働に対し、家庭内労働は重要度が低いというのは「冷淡な男性社会の見方」だと批判している。
「ベビーシッターやメイドを雇うことで、女性が勤めに出ることが可能なのであれば、それらの費用が所得を生み出すための『必要経費』であることは明々白々だ。しかし日本は専ら家事を女性だけに押し付け、まともに議論すらしてこなかった」
20代未婚女性の62.7%「出産後も働き続けたい」
日本の女性は、国際的に見ても家事にかける時間が長い。経済協力開発機構=OECDの調査(2013年)によると、日本女性は家事などの「無償労働」に1日299分(約5時間)を当てているという。これは世界29か国中、6番目に高い水準だ。
また日本では、「結婚・出産」が就労を続ける上での大きな障壁になりやすいという指摘もある。厚労省の調査(2012年)によると、女性の出産後継続就業率は26.8%で、4人に1人しか継続して働くことができていない。
妊娠・出産後に退職した理由は「家事・育児に専念するため」(39.0%)が最多で、「仕事と育児の両立の難しさ」(26.1%)と続く。両立が難しい理由としては「勤務時間が合わない」「職場が両立を支援してくれない」などが挙がっている。
保育園や幼稚園に預けられない「待機児童」の問題も深刻化している。家事支援税制が導入されればサービス事業者も増え、利用料金も下がって子どもを預けやすくなる可能性もある。厚労省の推計では、保育士の資格を持っていながら仕事をしていない「潜在保育士」が60万人以上いるという。
マイナビの調査(2012年6月)によると、20代の未婚女性は62.7%が「出産後も働き続けたい」と回答している。さらに「仕事と家庭を両立したい」(73.3%)は「専業主婦になりたい」(22.7%)を上回っている。
こうした女性の意見を新しい税制が後押しするのであれば、控除によって女性の社会進出が実現できる可能性が高まるかもしれない。
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