2014年09月22日 16:31 弁護士ドットコム
離婚や相続といった家庭のトラブルを裁判所で扱う「家事事件」。2013年度は91万6398件(司法統計)となり、過去最高を更新した。増加する家事事件に対応するための1つの方策として注目されているのが、行政機関との連携だ。9月20日に日本弁護士連合会が主催した「司法シンポジウム」では、弁護士としての経験も生かしながら独自の施策を推進する泉房穂・兵庫県明石市長が登壇し、行政と司法の連携を訴えた。
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明石市の取り組みで特に注目されているのが、離婚後の子どもの養育支援だ。今年4月から、離婚する夫婦を対象に、子どもの養育費や面会交流などの取り決めを促す「こどもの養育に関する合意書」の配布を開始。合意書の提出義務はないが、高い証明力を持つ「公正証書」を作成するための資料とすることもできる。
さらに、元家裁調査官たちによって作られた公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)の相談員による「こども養育専門相談」を、市役所の本庁舎で毎月1回実施している。
10月からは、離婚する夫婦に対して、面会交流やその後の成長について記録する「養育手帳」を配るほか、市の公共施設を面会交流の場として提供する。さらに、民法772条の「離婚後300日以内に生まれた子どもは前の夫の子どもと推定する」と定めた規定の影響で、親から出生届が提出されず「無戸籍」になった人たちの相談窓口も設置する。
泉市長はこれらの施策について、「行政と司法が連携してこそ、できることがたくさんある」と述べ、「ADR(裁判外紛争解決手続)機関として、明石市民裁判所を市役所の中に作りたい。もっと司法にアクセスしやすくしたい」とアイデアを披露した。日弁連に対しては「行政や福祉との連携をお願いしたい。提言にとどまることなく、面会交流センターを開設するなど、自ら取り組みを進めてほしい」と力説した。
明石市長のコメント動画はこちら。
https://youtube.owacon.moe/watch?v=sy1QMBgDOdk
行政と司法の連携については、シンポジウムのパネルディスカッションでも意見が交わされた。二宮周平・立命館大教授は「紛争の葛藤のレベルに対応した解決システムが求められている。家裁が注力するもの、行政がやることの振り分けをしてほしい」と述べた。
FPICの常務理事で臨床心理士の山口恵美子氏は「調停の入り口と出口で親教育や相談がなく、家裁がすべての問題解決のプロセスを担わざるを得なくなっている。必要な役割を分かち合って、受け皿を増やせればいい」と語った。
元東京家裁所長代行で、大東文化大学法科大学院特任教授の近藤ルミ子氏も「何もかも家裁がやれと言われる時代になっている。手続きの入口と出口で他機関と連携できるといい」と主張した。
金澄道子弁護士は、「市役所で相談やガイダンスを実施して、当事者同士で対応できるのか、DVのおそれがないのかなどを振り分けができる仕組みが大切だ。その中に弁護士が入っていくことも必要になる。弁護士会が相談窓口を作って待っているだけでは、市民との距離は縮まらない」と訴えた。
パネルディスカッションの動画はこちら。
https://youtube.owacon.moe/watch?v=eA5i-eBWz6o
(弁護士ドットコムニュース)