金曜の夜に続いて、土曜の夜も激しい雨に見舞われたシンガポール。土曜の雨は金曜よりも長く、約6時間に渡った。マリーナベイ・ストリートサーキットの路面に叩きつけた大粒の雨によって、アスファルトに付着したタイヤのラバーは完全に洗い流され、日曜朝のコースは“グリーン”な状態となっている。
地元の天気予報では、日曜の天候は「曇り、ところにより雨」となっている。レースが行われる夜の降水確率は20%と微妙な状況だ。ピレリのマリオ・イゾラ(レーシングマネージャー)によれば「ドライコンディションでレースが行われた場合、3ストップがメインの戦略となる」。ただし「シンガポールGPは過去6回すべてレース中にセーフティカーが出ているので、そのタイミングによっては2ストップでも十分勝機はある」と語る。
予選後パドックで話題となったのは、コンマ5秒差に8人のドライバーがひしめいたことだ。前戦イタリアGPではポールポジションのルイス・ハミルトンからコンマ5秒以内にいたのは予選3位のバルテリ・ボッタスまでだったから、いかにシンガポールの予選が接戦だったかわかる。
その理由をニコ・ロズベルグは「コース特性だろう。だから今シーズン残りのレースがシンガポールのように混戦になるとは思っていない。それは鈴鹿に行けば、わかると思う」と分析。ポールポジションを獲得したハミルトンも「このあとのグランプリで僕とニコの間にライバルたちが割り込めば、ドライバーズ選手権のポイントは急速に縮まるだろうが、おそらくそうはならないだろう」と、メルセデス優位を信じていた。
イタリアのテレビ局RAIで解説を務めている元F1ドライバーのイワン・カペリは「今回のシンガポールGPの勝者を予想するのは今シーズン最も難しい」と頭を悩ませている。「勝利を狙える権利を持っているのはメルセデスのふたりとレッドブルのふたり、そしてフェルナンド(アロンソ)の5人。あとはセーフティカーがどんなタイミングで出るか。もしセーフティカーが出なければ、どんなピットストップ戦略を採り、それをドライバーがいかに完璧に遂行するかがポイントとなるだろう。私の予想では、ここではアンダーカットは通用しないからね」
果たして、過去3勝挙げているセバスチャン・ベッテルが今季初優勝を遂げるのか。過去2勝しているフェルナンド・アロンソがフェラーリに今季初勝利をもたらすのか。ドライバーズ選手権で首位のロズベルグを22点差で追うハミルトンが2010年以来の優勝を飾るか。それとも、シンガポール未勝利のロズベルグ、ダニエル・リカルドがここでの初白星を挙げるのか。7回目のシンガポールGPは大接戦の予感とともに、もうすぐ61周のレースのスタートが切られる。
(尾張正博)