シンガポールGPの予選、フロントロウを独占したのは、今回もメルセデスAMGの2台でした。ポールポジションにはルイス・ハミルトン、2番手にはニコ・ロズベルグ。わずか7/1000秒差という非常に僅差のポールポジション争いでした。
しかし、いつもとは様相がまるで違います。それは、ライバルとなるチームが、後方すぐそばに接近しているということ。現に、ハミルトンとロズベルグがフロントロウを決めたのも、最後の最後のアタックでした。3番手のダニエル・リカルド以下、セバスチャン・ベッテル、フェルナンド・アロンソ、フェリペ・マッサ、キミ・ライコネン、バルテリ・ボッタス、ケビン・マグヌッセン……9位のドライバーまでの差は、わずか0.569秒差。レッドブルとフェラーリは金曜日から速さを見せていましたが、FP1とFP2で下位に沈んでいたウイリアムズが、金曜セッション後のセットアップ見直しで、ここまでパフォーマンスを上げてきたことが、最大の驚きと言えると思います。
では、決勝レースがどのようなレースになるのか? これを予想するのは非常に困難であります。メルセデスは当然優勝を狙いますが、ライバルたちも「ポールポジションも可能だった」(ベッテル)、「決勝でもチャンスはある」(リカルド)、「明日のレースは信頼性が鍵だ」(アロンソ)、「可能な限りたくさんのポイントを持って帰りたい」(ライコネン)という、自身に満ちたコメントを発しています。確かに、彼らが金曜日のフリー走行2回目で見せたロングランのペースはメルセデスAMG勢に匹敵するものであり、決勝レースでも大きく離されることはないと思われます。ウイリアムズはフリー走行2回目でのペースは非常に遅いものでしたが、セットアップの変更によりロングランペースがどこまで改善できているか? 非常に気になるところです。
各チームの能力が拮抗しているとして、勝敗を分ける可能性のある要素はふたつ。タイヤの管理とセーフティカーです。
まずタイヤの管理について。この点は予選後のコメントで、各ドライバーがその重要性について口を揃えました。今回持ち込まれたタイヤはソフトとスーパーソフトという、もっとも軟らかい組み合わせです。両方のタイヤの性能差は非常に大きく、ピレリの発表によると1周あたり2.5秒もあると言います。確かに予選でも、1.6~3秒弱程度の差がありました。となると当然スーパーソフトを多用したいところですが、デグラデーション(タイヤの劣化によるラップタイムへの影響)が大きく、3ストップ作戦が主流となりそうです。つまり、ピット戦略を活かした順位逆転のチャンスが多く存在するということ。また、例えばソフトタイヤのライフの長さを活かし、他とは違う2ストップ作戦で上位を狙ってくるチームもあるかもしれません。
次にここシンガポールは、ランオフエリアが狭く、クラッシュが多発することで知られています。そして、セーフティカーの出動率は100%。そのタイミングをいかに上手く乗り切るかが、勝負の分かれ目になるでしょう。なおこのコースは、コース上でのオーバーテイクは非常に困難。ライバルを抜きあぐねるといった状況に陥ってしまったドライバーにとっては、セフティカーのタイミングはポジションアップのチャンスになるかもしれません。
ちなみに、燃費は各車ギリギリというところでしょう。レース時間は非常に長くなることが予想され、セーフティカーランの長さによっては、2時間を超えるレースとなる可能性もあります。
今季最大の激戦となりそうなシンガポールGP。いったいどんな結末が用意されているのでしょうか? 日本GP前最後のレースということもあり、見逃せない一戦となるのは間違いありません。シンガポールGPの決勝は、今晩21時スタートです。
(F1速報)