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F1シンガポールGP現地直送:ウイリアムズ、超早朝ピット練習の理由

2014年09月21日 00:30  AUTOSPORT web

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金曜の低迷から、トップ10へと浮上したウイリアムズ。予選6位につけたフェリペ・マッサには優勝争いの芽もある。バルテリ・ボッタス(写真)は予選8位
金曜の深夜、いや正確に言うと土曜の朝、シンガポールは激しい雨に何度も見舞われた。午前4時から1時間降ったあと、午前6時から45分間、さらに午前7時から30分間、にわか雨がサーキットを襲った。その最中、ピットレーンでピットストップ練習を開始するチームがあった。ウイリアムズである。時計の針は午前6時を差していた。

 レースのスタート時間に合わせ、ほとんどすべてのスケジュールが6時間遅れで進行しているシンガポールGPの週末。しかし、午前6時はヨーロッパ時間で午後11時。その時間にピットストップ練習を行うのは、まれである。ウイリアムズがそんな時間にピットストップ練習を行っていたのには理由がある。今回のシンガポールGPは3回ストップが主流になる。同じ市街地コースのモナコGPが今年1回ストップだったのに対して、平均速度で約10km/h上回るとはいえマルチピットストップが予想されているのは、直角コーナーが多いマリーナベイ・ストリートサーキットがリヤタイヤに厳しい特性を持つからである。

 それならウイリアムズ以外のチームがピットストップ練習を行っていても不思議はないが、その他のチームは金曜の深夜にピットストップ練習を行っていた。ウイリアムズの練習がシンガポール時間の早朝になってしまったのは、その前の作業が長引いたからである。それは土曜日に向けたセットアップ変更だ。

 金曜のフリー走行でフェリペ・マッサが17番手、バルテリ・ボッタスが18番手と予想外に低迷したウイリアムズ。問題はマシンバランス、特にスーパーソフトタイヤを装着したときに速さを引き出せないことにあった。金曜の深夜2時にエンジニアとのミーティングへ向かうボッタスに「シンガポールのようなサーキットで、ウイリアムズは厳しいですか」と尋ねると、「いや、基本的なセッティングがおかしいだけ。今夜セットアップを大きく変えるから、たぶん土曜はだいじょうぶ」と語った。そのためウイリアムズはいつも以上に金曜の夜のセットアップ変更作業が長引いていたのである。

 さらに金曜の夜、遅くまでサーキットで仕事していたのはウイリアムズだけではない。日付が変わった土曜の午前7時半にメディアセンターを出てパドックのゲートに向かうと、「ペトロナス」という刺繍入りのシャツを着て、傘をさして歩くふたり組がいた。メルセデスのパディ・ロウ(エグゼクティブ/テクニカルディレクター)とメルセデスエンジンの責任者であるアンディ・コーウェル(マネジングディレクター)だった。それから8時間後、土曜の午後3時半に再びパドックの入口でふたりに遭遇。「金曜からハードワークでしたね」と声をかけると、「いつものことだよ」とロウは笑っていた。

 モナコに次いでパワーユニットの差が出にくいシンガポールGPで、ウイリアムズがどんな戦いを披露するのか。そして、メルセデスはアドバンテージを維持できるのか。シンガポールGPの夜は、いつも以上に人間の戦いが見える一戦となりそうだ。

(尾張正博)