2014年のF1シンガポールGPでは、全ドライバーが同じ内容の質問を受けた。無線規制に関する質問だ。無線に規制がかけられた最初のグランプリとなったからである。可夢偉も例外ではない。多くのドライバーが無線禁止の是非について、さまざまな意見を述べた今回。可夢偉のコメントも実に興味深いものだった。
「上位を走行しているマシンに問題が起きたとき、それに(彼らが)気がつかないで走り続けてリタイアするようなシーンが連続すれば、僕らにもチャンスはめぐってくるかもしれない。でも、ポイントが望めないポジションで走っている下位チームは、ポイントを狙って競争するよりもパワーユニットをいかに長く使うかを優先してプッシュしないかもしれないので、逆に上位との差が広がる可能性もある」
つまり、可夢偉によれば、無線の使用に関して規制をかけても、チーム間のパフォーマンスにあまり影響はないのではないかということである。その理由を次のように続けた。
「無線に中途半端に規制をかけても、レースが面白くなるとは思えないんですよ。だって、たとえばバイトポイントなどのクラッチマップやセッティングの情報を伝えることが禁止されたとしても、お金があるチームは多少ポイントがズレても安定してクラッチがつながるようなクラッチを開発してくると思うんです。だから、無線を規制するんだったら、クラッチをワンメイクにしたほうが、ドライバーの技量がスタートの良し悪しにつながって、観客に喜んでもらえるはず。あるいは、もし無線を規制するなら、いっそのこと無線を全部なくしてしまうくらい思い切った変更をやったほうがいい」
結局、木曜のチームマネージャー会議で、安全面からマシンの信頼性に関する情報の伝達など、いくつかの項目が規制対象から除外された。
無線に規制がかけられて行われた初日のフリー走行。セッションを終えて会見を行った可夢偉は、こう言った。
「そもそも、日頃から自分たちはそんなに難しいことはしゃべってなかったということがわかった。だから無線に規制がかけられても僕たちには関係のない話だった。無線に規制がかけられるのにともなって一応僕たちも小さいディスプレイなりに表示を調整していたんですが、あまりにも路面がバンピーでクルマが跳ねまくるので、全然見えなかった」
無線を活かしてパフォーマンスをアップする以前に、チームにはやるべきことが山積している。
(尾張正博)