2000年から12年のGDP成長率が350%という、驚異的な成長を続ける中東の国カタール。巨大な富をもたらしたのは、1971年に発見された「世界最大の天然ガス田」だ。その埋蔵量は、日本の天然ガス消費量の実に350年分と見られている。
2014年9月15日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、カタールのエネルギー開発の経緯と、日本企業が大きな役割を果たした「オールジャパンプロジェクト」と呼ばれる貢献を伝えた。
ガス田商業化を実現した日本の大プロジェクト
カタールの平均的な公務員アブドゥラさん(40)のお宅を訪ねると、600平米の敷地に応接間が3つもある豪華な邸宅だった。年収は1600万円で、水道・電気代や医療費は無料、所得税もなし。何にお金を使うのか訊ねると、「人生ですね」という答えが返ってきた。
いまや世界一裕福な国とも呼ばれるカタール。首都のドーハは、1993年のサッカーW杯最終予選の「ドーハの悲劇」の地として有名だ。現在は近代的な高層ビルが立ち並び、建設ラッシュに沸いている。カタールガスのCEOは、
「この国の繁栄と現在の地位は、すべて日本の方々のおかげです」
「日本はカタールの基盤を作った大事な顧客と考えています」
と賛辞を惜しまない。というのも、かつてのカタールには、巨大な天然ガス田を商業化し輸出できる技術も資金もなかったからだ。それを可能にしたのが、オールジャパンで取り組んだ「LNG(液化天然ガス)開発プロジェクト」だった。
総合商社の三井物産は1989年、商業化のメドが全く立っていなかったカタールの事業に参画。中東三井物産ドーハ事務所長の滝島雅之氏は、「オールジャパンプロジェクト」のあらましを説明した。
「(LNGの)買主は中部電力をはじめ、日本の電力、ガス会社。プラント建設は日本のエンジニアリング会社、LNGタンカーの造船は日本の造船大手3社。まさに『オールジャパンプロジェクト』というのが、カタールガスプロジェクトです」
建設中は1日7万5千人の作業員が600台のバスで送迎され、中東で「ピラミッド以来の大工事」と言われた。96年に完成したLNGプラントは600メートルにも及び、現在ではLNGの生産・輸出量ともに世界一で、年間生産量は7700万トンにのぼる。
過酷な現場で働く新入社員「日本企業はカッコイイ」
番組では、東日本大震災の後、日本への恩返しにと「カタールフレンド基金」が設立されたことも紹介した。漁業・教育施設などの震災復興支援を目的にカタールが1億ドル(約100億円)を援助。宮城県女川に6000トンの魚を冷凍冷蔵できる施設を震災後のわずか半年後に建設し、水産に携わる人々の光明となった。
オールジャパンプロジェクトは、現在も進行中だ。ラスラファン工業都市ではジェット燃料精油プラントを建設中で、インドなどからの外国人労働者たち1000人を率いるのが千代田化工建設だ。
気温54度を超すと作業が全面停止になる過酷な現場に、新入社員で京都大学の大学院を卒業したばかりの益田浩さん(25)がいた。益田さんは入社動機をこう話す。
「大学で土木工学を専攻していたので、ものづくりに携わりたいと思っていて、スケールの大きいもの作りをしている千代田化工さんに入社を決めました」
千代田化工建設にとって、ここは何もない砂漠のころからプラントを開発してきた特別な場所だ。湿気と暑さで大変な現場だが、培ってきたノウハウを次世代に継承すべく若手社員を現地に派遣しているという。
住まいは現場近くの宿舎で、湿度が高くカビが発生しやすいためクーラーは24時間つけっぱなし。バストイレ共同の6畳一間だというが、益田さんに不満の様子はなかった。充実した表情で、「カタールの発展には、千代田化工とか他の日本企業の姿があると学んで、カッコイイなと思います」と語った。
灼熱の砂漠はビジネスチャンスでいっぱい
番組では、急成長中のカタールにビジネスチャンスを求め、日本の中小企業の営業マンが遮熱塗料を売り込む様子も伝えた。
建物の屋根が80度にもなるカタールでは、外壁に塗るだけで建物が高温になるのを防ぐ塗料は「冷房効率があがり地球環境にも良さそうだ」と、トントン拍子に売り込みが成功していた。
「ドーハの悲劇」のカタールで日本の企業が大きな活躍をしていることを、番組で初めて知った。そこで働く人たちは、灼熱の砂漠で安全管理に配慮しながらテキパキとしっかり働いており、最先端の技術で貢献しているという誇りが感じられた。(ライター:okei)
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