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可夢偉のF1シンガポールGP木曜:ケータハムだけ「まだタイヤがない」

2014年09月19日 13:00  AUTOSPORT web

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イタリアよりは余裕のある表情。今は眉毛よりもタイヤが気がかり──
「シンガポールGPに出場できると聞いたのは、今週の月曜日かな? ただ今回は、事前に誰か他の人が乗るのではないかという噂も流れていなかったので、シンガポールGPには出られるんだろうかと思ってはいました」

 水曜の深夜に日本を発ち、木曜の午前中に現地入りした2週間前のイタリアGPとは違い、今回は水曜の夕方にシンガポール入りしていた可夢偉。シンガポール出発前に上げたツイートにもイタリアGPより余裕が感じられた。

「おはようございます。眉毛無くなりましたが、シンガポールグランプリに向かいます。 誰も理由は聞かないで下さい。落ち込んでます」

 9月13日に28歳の誕生日を迎えた可夢偉は、富士山の登山期間が終了する前に、一念発起して御来光を拝みに富士山登頂を試みたのである。初めての登頂は思いのほか大変で、一睡もせずに翌日は本山哲選手のカートイベントに参加したこともあって、その後、20時間爆睡。寝ぼけたまま起きて、シンガポールに向けて眉毛をセットしようと、トリマーのカミソリの刃をいつものようにセットしたつもりが、いつも使っている5mmではなく、0.5mmにしていたのだ──。

 そんな笑い話をパドックで話すのも、ハンガリーGP以来のこと。モンツァでは冗談のひとつも飛び出すことがないほど張りつめた空気が、シンガポールの木曜は穏やかだった。しかし、2週間後の日本GPについて尋ねると、可夢偉の表情は少し曇った。

「まだ何も聞かされていないです」

 木曜の時点で、シンガポールのサーキットにケータハムの首脳陣の姿はなかった。可夢偉は「今お金を用意して、こちらへ向かっているところじゃないですか」と笑ったが、それがただの冗談でないことは、木曜の夜の段階でケータハムだけピレリのタイヤが供給されていないことが物語っていた。ペイドライバーにシートを奪われずに済んだシンガポールGP。それは裏を返せば、チームに期待していたお金が入ってこなかったことを意味する。

 シンガポールGPに出場できたことは日本GPへ向けて悪くないニュースだったが、今度はシートがあってもタイヤがなくて走ることができなくなるかもしれない……。新たな苦境に立たされている可夢偉、28歳になっても波乱の日々が続いている。

(尾張正博)