東京スカイツリーにある「レムソンズ」は、セルフサービスでアイスクリームの量り売りをしている。自分で好きな味やトッピングを選び、100グラム330円。若い男性客は1500円以上もする自分だけのオリジナルアイスを、友人たちと満足そうに食べていた。
この人気チェーン店を仕掛けたのが、フレッシュネスバーガーの創業者、栗原幹雄氏だ。2014年9月11日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、飲食店を次々と人気店にしていく栗原氏の手腕とアイデアの源泉に迫った。
セキスイハウスを26歳で辞め「ほか弁」急拡大に一役
栗原氏は1951年生まれ。大学では建築を学び、1974年積水ハウスに入社、2年目から自ら志願し現場監督を務めた。しかし26歳のとき、
「このまま(会社に)定年までいたら、何も人生面白くないな」
と考え、その矢先に義理の兄に誘われて「ほっかほっか亭」の立ち上げに参画する。
冷たい作り置き弁当が当たり前の時代、作りたての温かい弁当が260円(当時)で買えるとあって大当たり。栗原氏は、オープンのチラシからメニューのデザイン、物件探し、マニュアル作りなど「人の10倍100倍仕事をしていた」と振り返る。
そこで飲食業のノウハウを学び、4年で1000店と常識破りの拡大を果たし経営が安定したころ、「自分がいなくても店は回る。今まではなんだったのだろう」との思いがよぎる。
そんな時、不動産屋が持て余していた物件を見に行って、「アメリカの田舎でみたハンバーガー屋だ」と感じ、一瞬にしてフレッシュネスバーガーの開業をひらめく。溢れ出す店のイメージを、一晩で一気に描き上げたという。村上龍が、
「(そのように生み出す)ワクワク感を人生の基本にしちゃうと、安定期に入ったときに『違う』となってしまうのでは」
と問うと、栗原氏は「人生の先が見えるとつまらないです」と満面の笑みで答えた。
洋画のDVDを1本10分で「早送り視聴」
栗原氏は現在フレッシュネスバーガーを退き、「自分は生む、作る方が好き」と、2年前に飲食業態の立ち上げ専門会社「フライドグリーントマト」というベンチャー企業を運営している。
レムソンズをはじめ、タレントのジローラモ氏がリニューアルを依頼し大ヒットしているワンコインピザのカフェ、さらには吉野家ホールディングスが赤字続きの子会社「グリーンズプラネット」の再建を依頼、見事黒字に転換させた。
アイスクリーム店「レムソンズ」を経営するのは、若者に人気のアパレルメーカー「ビームス」だ。ビームスの設楽洋社長は、栗原氏を「突拍子もない発想というのではなく、非常に時代と合いながら、今までになかったものを見つける目を持っている」と絶賛する。
客を呼ぶアイデアとセンスを、どうやって磨くのか。栗原氏は帰宅すると、毎晩必ず映画の「早送り鑑賞」を行う。洋画のDVDを1本あたり10分程度で終わるほどの早送りで3本ほど観る。
ストーリーよりも、衣装や家具、小物などのデザインを見ており、これを20年以上続けているそうだ。店の内装、コンセプトは、映画の世界を模倣し際立てて設計しているという。
村上龍「アイデアと実行の間には、無限に等しい隔たり」
さらに栗原氏は、アイデアの出し方を「まじめにやりすぎてもダメ」という。その根底には、遊び心があるようにも感じた。
「みんなに好かれようとすると普通になってしまう。ある一定の人に根強く好かれるほうがいい。会議ばかりしてもいいアイデアは出ない」
村上龍は編集後記で、「アイデアと、実行の間には、無限に等しい隔たりがある。それを埋めるのは、それまでその人が経てきたトレーニング以外にはない」と記した。一生懸命考えているだけ、会議しているだけでは「いいアイデアが降ったように湧いてくる」ことはない。
その人が自らどんな経験をしたか、知識や情報の蓄積をしているか、さらにトレーニングを継続してきたか、その事実が重要になってくるようだ。栗原氏はこれを軽やかに笑いながら、決して苦労してきましたという姿は見せず、アイデアを生み出すのが楽しくて仕方がないといった様子で語るのが印象的だった。(ライター:okei)
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