2014年09月12日 20:01 弁護士ドットコム
内部告発をしたら「報復」の懲戒処分を受けた――。現役の陸上自衛官がそう訴えて、国を相手に裁判を起こし、懲戒処分(停職6日)の取消しと国家賠償を求めた。しかし東京地裁は9月11日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
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判決を受けて、原告の島田雄一・一等陸尉は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「公益通報をした人が不利益を受けることがないようにしたい。それが(裁判を起こした)最低限の目標だ」と話した。
島田さんによると、懲戒処分を受けた背景には、次のような事情があった。
島田さんは2007年4月、自衛隊の入隊勧誘に功績のあった人に授与される「藍綬褒章」の叙勲推薦業務を担当していた。そして、推薦業務の実態がずさんで、当然あるはずの証拠や文書も残っていなかったことに疑問を抱き、改善すべきだと考えたのだという。
島田さんはまず上司に訴えたが、相手にされなかった。そのため上司の目の前で、上司が印鑑を押すべき書類に、勝手に押印した。自ら問題を起こすことで、推薦業務に問題があることを表ざたにしようとしたのだという。
しかし、このもくろみは失敗に終わった。なんと彼の問題行為は不問とされ、推薦業務の問題点もそのままにされてしまったのだという。そこで島田さんは2009年1月以降、防衛大臣への内部通報、マスコミへの外部通報、検察庁への告発等を行った。
その後、防衛省は2011年の6月になって、2007年度の藍綬褒章の叙勲推薦業務に問題があったとして、推薦業務に改善の必要があると判断した。
しかし、そのわずか1カ月後、島田さんは2007年当時の任務違反行為を指摘され、懲戒手続が始まった。島田さんは結局、問題行為から4年以上経過した2012年になって、停職(6日)の処分を受けたのだという。
東京地裁の判決は、「藍綬褒章上申行為の職務執行の適正化を図る目的があるとしても、その是正は公益通報その他の適法な手段によるべき」として、島田さんの無断押印は正当化できないと判断した。
島田さんは判決に対し、「どうすればよかったのかと裁判所に聞きたい。公益通報制度を利用すればよかったというが、公益通報制度の防衛省の部外窓口ができたのが2009年1月だ」と話し、無断押印をした2007年当時は、他に手段がなかったのだと強調した。
記者会見に同席した光前幸一弁護士は「防衛省の一方的な主張だけを取り上げて結論を導いているということで、承服できない」として、控訴する意思を示していた。
(弁護士ドットコムニュース)