「面接が終わったらお礼状を送ると、他の学生との差をつけられる」――。就活本や就活関係のサイトなどでよく見かける内容ですが、彼らが本気で書いているのなら、採用現場のことを全く知らない人たちなのでしょう。
採用業務の経験者なら誰もが知っていることですが、お礼状の有無で面接の合否が変わることなど全くありえません。採用担当者の知り合いの中でも、お礼状で合否を決めた人など会ったことがありません。(文:河合浩司)
メールでも「採否が決まるタイミング」に間に合わない
実は採否が決まるタイミングから見ても、お礼状は影響の及ぼしようがない状況なのです。採用担当者個々人の中では、面接中に採否は決まっています。そして面接終了後に、お互いにそれぞれの判断と意見を共有し、その場で決定を行います。
そして次の就活生の面接に入ると、完全に頭を切り替えるので、前の面接のことはほとんど忘れてしまいます。1日が終わってから、「1組目の右から2番目に座っていたこの学生は…」という会話は、よほど強力に印象に残った就活生か、よほど記憶力が良い採用担当者でない限り難しいでしょう。
一方、就活生がどれだけ早くお礼状を書いても、ハガキが採用担当者のもとに届くのは翌日のこと。ポストに投函するタイミングによっては、もう少し先かもしれません。お礼状が読まれる時には、合否はもう確定しているのです。
これはお礼メールも同様です。採用担当者が席に戻ってメールをチェックするのは、その日の面接が全て終わってからになるでしょう。本人の気休めは別として、お礼状を書いたところで、選考で有利に働くことは起こりようがないのです。
そもそも、「自分が有利になるために」送るハガキは、果たして「お礼状」と呼べるものなのでしょうか? 単に自分が利を得るために書いているのであれば、一方的なDMと何ら変わりありません。一度しか買ったことのない量販店から届く「上得意様へ」というDMと同じで、心動かされる人はいません。
内定を蹴って他社に入った人と関係が続くことも
このように、手紙やメールの有無で面接の合否が変わることはありませんが、だからと言って「送るな!」と言いたいのではありません。純粋に気持ちを伝えたい時には、送ることも悪くないとは思います。
二十歳そこそこの若さで、そのような習慣を身につけていることは、ひとりの社会人として大事なことです。このような方々は、仮に弊社では内定を出せなくても、他社できっと良いご縁があると思います。
採用担当者も人間です。私も毎年数人からいただきますが、気持ちが込められたメッセージをもらえると嬉しいものです。彼らがハガキを発送した時点では自分たちの合否は知りません。それでもわざわざ送ってきてくれます。
不思議なことに、ハガキを送ってくれる方々のほとんどが採用になっている人から。とはいっても、お礼状を送るから採用になるのではなく、彼らの常日頃の人に対する姿勢が内定につながっているのだと思います。
お礼の連絡をくれた学生の中で、他社への入社となった方と卒業後も付き合いが続くことがあります。就職後もつながりがあれば、社外の社会人として相談相手にもなりうるし、転職しようと思ったときの選択肢になるかもしれません。
お礼を送るべきなのは、むしろ会社側なのかも
もちろん、すべての採用担当者がこのような関係に対応できるとは限りませんが、こうした人間関係は生涯の財産になるのではないでしょうか。これこそが、本来の「お礼」のあり方だと私は思います。
もっとも、わざわざ会社を受けに足を運んでくれた就活生一人ひとりに対して、もっと感謝とお礼の気持ちを持つべきなのは、採用担当者の方なのかもしれません。
せめて面接に来てくれた学生さんたちには、お礼のメールだけでもお送りしていきます。数ある企業の中から、弊社を受けに来てくれたことに感謝する気持ちを伝えるために。
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