ゲリラ豪雨や雷、大粒の雹(ひょう)――。地球温暖化の影響か、ここ最近、日本国内には亜熱帯かと思えるような異常気象が続出している。中でも昔から地震や火事と並んで恐ろしいものの代表とされる「雷」だが、この分野に特化した専業メーカーが存在する。
「日本のモノづくり中小企業」を紹介する連載の第2回で取り上げるのは、兵庫県尼崎市に本社のある音羽電機工業だ。同社の配電用避雷器の国内シェア率は6割を超え、東京スカイツリー(R)や大阪・あべのハルカス、京都・清水寺など多くの建物にも採用されている。
すでに欧米10数か国に輸出中。経産省も注目
音羽電機工業は今年3月、経済産業省が将来の世界的飛躍が期待される企業を表彰する「ネクストGNT(グローバルニッチトップ)」に選出された。対象製品は、雷が落ちたときに被害を防ぐ避雷器の心臓部に使われる「酸化亜鉛素子」という素子だ。
酸化亜鉛素子は、通常の電圧には「絶縁体」として働き、雷のような大きな過電圧に対しては「導電体」として働く非直線形の抵抗素子だ。同社は、この酸化亜鉛素子の粉体の研究から製造までを自社で行っている。
酸化亜鉛素子を生成する粉の配合や調合、成形プレス圧や燃成温度などで、独自のノウハウを持つことが強みだ。24時間稼働の自社工場で生産することにより、顧客のニーズに合ったカスタマイズが可能となっている。
酸化亜鉛素子は、現在欧米諸国を中心に10数か国に輸出されているが、今後は酸化亜鉛素子だけではなく避雷器本体を売り込んでいく考えだ。
国内では、開発の進む燃料電池自動車の水素ステーションにも避雷器を設置し、電源対策などを行っていきたいと考えている。すでに新幹線など公共の乗り物にも使われており、将来的にはリニアモーターカーへの設置も期待したい。
従業員数274名、平均年齢は40歳前後
音羽電機工業は1946年に京都で創業。「音羽」は京都・清水寺の音羽の滝から取られており、滝の水が枯れないように「企業として長く続くように」との思いが込められている。
創業当初から避雷器の分野に注力し、57年に全国発明実施賞を受賞したのを皮切りに、藍綬褒章、大阪市長賞、澁澤賞、勲四等瑞宝賞叙勲、科学技術長官賞、黄綬褒章、旭日双光章など数々の章を受賞している。
従業員数は274名で、平均年齢は40歳前後。世代交代が進んでおり、20代と30代の社員が41%を占める。入社1年目、技術部に所属する清水さんは、入社の決め手をこう話しているという。
「学生時代、高電圧の測定に関する研究を行っており、学んできたことを生かせる仕事に就きたかった。音羽は世界的にも珍しい試験装置を持っており、レベルの高い測定技術を持っていることが魅力だった」
現在、業務として、製品の図面の手直しや開発した製品の性能評価の試験を行っているとのことだが、製品の開発自体にかかわるのが将来の目標だ。
中途採用も実施中。特に海外営業は歓迎
なお同社では、新卒採用・中途採用ともに現在受け付け中だ。特に海外営業に携わるチャレンジ精神や広い視野を持った人材を求めている。英語や中国語といった語学力があれば歓迎だ。
新卒者はリクナビ2015からエントリー。中途採用希望者は音羽電機工業の総務センター(TEL:06-6429-3541)まで連絡をしてほしいとのこと。ウェブサイトでは「雷写真コンテスト」も実施しており、まずはそこから雷への関心を高めていってはどうだろう。(取材・執筆:早稲田大学大学院ジャーナリズムコース修士2年・林佑香)
※本記事は読者の就職先選びに資する情報として、経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」からキャリコネ編集部が独自に選定した企業を取材したものです。
あわせてよみたい:ものづくりの世界的優良企業を探す方法
最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします