就職活動で面接にまでこぎつけられず、やり場のない憤りを感じた人もいるに違いない。「直接会えば自分の魅力が分かるはず!」というわけだが、世界的にみると電話1本で採否を決める会社もあるらしい。
9月4日に投稿された「サンフランシスコで就活しました」というブログエントリーには、日本人読者から驚きの反応があった。書類選考は通過するものの、面接の前段階の「電話面接」で10社以上も落ちまくったというのだ。
在米エンジニア「スクリーニングで10社以上落ちた」
ブログの筆者は「シリコンバレーの某老舗ゲーム会社」で6年の経験があり、同じゲーム業界への転職を希望していた。自信を持っていざ転職活動を始めてみると、「スクリーニング」と呼ばれる電話面接で落とされることが相次いだ。
「いや、ダメだったといってくれる会社はむしろありがたいです。80%くらいは、『次があれば連絡するから』って形式で、返事を待ったままフェードアウトです」
公開される募集要項には進行中のプロジェクトが多いため、最低限の要件しか書けない。そのため電話面接では、より詳しくスキルについて聞かれるのだ。
「マルチプレイヤーモードのリードを探してるんだけど経験ある?」
「FPSとTPS両方やったことあるといいんだけど」
筆者は認識を改め、「ひたすら自分の価値を信じて売り込み続け」る方法に切り替えたところ、3社から面接を取り付けた。すると今度は、さまざまな担当者と「最低5時間、長いと2日にわたって10時間」もの長時間を拘束されて選考されたという。
日本企業の場合、「書類選考」と「短時間の面接」の2段階しかない場合は多く、電話でのスクリーニングはあまり聞かれない。おそらく「人物重視」の採用では、電話で確認できる要素は少なくないと考えられているのだろう。
一方、「スペック重視」の外資系企業では、日本でも電話面接を取り入れるところも増えているようだ。外資系IT企業に強い転職エージェントのT氏によると、電話だけでその会社に必要なスキルセットが分かってしまう場合も少なくないという。
「そうすれば、直接会う必要のない人を電話で振り分けられるから、必要性の低い面接の時間が省ける。面接に進む場合では、スクリーニングされた状態で臨めるから、(直接会って)何を聞けば良いかの判断軸が明確になる」
ツイッターにも「電話面接マジ緊張した」の声
ツイッターにも「電話面接を初めて経験した!」「電話面接マジ緊張したわ(笑)メンタル鍛えないと」「今日はとても大事な電話面接」といったつぶやきをしている人も散見される。
T氏によると、こうした動きが顕著なのはインド系や中国系の企業だという。必要なスキルが明確で、問題がなければどんどん正社員として採用する。逆にスキルセットがあって採用されても、仕事にフィットしければどんどん解雇される。
そうした流動性の高い環境では、「当日まで顔を知らない」人が100人単位で電話面接によって採用されることもあるという。前述のブログのような、長時間の面接もない。
その後、遠隔地の自宅勤務でも選択すれば、同僚たちと一度も会わずに仕事を行い、プロジェクトを終えて解散することもありうる。
もちろん、10時間の面接をする人材と、一度も会わない人材では、仕事の種類も違う可能性もある。しかしこれに比べると、日本の採用方法に多様性があまりにも乏しいと感じるのも事実だ。
現場への「採用権の委譲」が進めば自然と増えそう
T氏も「日本の動きは遅々たるもの」と指摘する。中には電話面接に取り組み始めたものの、「日本企業特有の問題」で止めてしまう企業も存在するようだ。
「必要なスキルセットを理解・把握していない人事担当者が電話面接をするので、十分なスクリーニングができず、『やっぱり会わないと分からない』となる企業も意外に多いんです。熟練した人が担当者になれば、また違うのでしょうが…」
この点は、プロジェクトの責任者が直接「人集め」の権限を持つ海外の企業と、採用専門の人事担当者にしか権限のない日本企業との違いもありそうだ。しかし現場に採用権の委譲が進めば、人物よりスペックでの採用が進み、「電話で十分」という会社が増えていくことだろう。
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