今年のイタリアGPで一番メディアの注目を集めていたのはメルセデスふたりの争いでもなければ、フェラーリのドライバーでもない。フェラーリの社長を務めるルカ・モンテゼモロだったと言っていいだろう。
土曜日のフリー走行3回目が開始される午前11時。多くのカメラマンはピットレーンやコースサイドではなく、パドックの入口に残っていた。モンテゼモロの入り待ちである。モンテゼモロが到着してフェラーリのモーターホームに入り、セッションが終了すると、今度はモーターホームからの出待ちにパドックにいる全員が来ているのではないかと思うくらい多くのカメラマンが集結した。
予選後の記者会見でもフェルナンド・アロンソに対して、モンテゼモロに関する質問が繰り返し浴びせられた。これまでもモンテゼモロが退陣するという噂は何度かあったが、今回は現実のものになるだろうとイタリアのメディアが感じていたからである。あるイタリア人ジャーナリストは言う。
「9月11日にフィアットの取締役会がある。そこで最終的な結論が出るだろう。おそらくモンテゼモロは社長の座から降格し、グループ会社のアリタリアへ飛ばされる」
では、誰がフェラーリの新しい社長となるのだろうか。
「フィアットのCEOを務めるセルジオ・マルキオンネだ。彼はフィアットのCEOにとどまり、フェラーリの社長も兼務するようだ。イタリアGP開催中にイタリア北部のコモで開かれていたフィアットグループの会合で決まったらしい」
元フェラーリF1ドライバーで、現在はイタリアRAIテレビの解説を務めるイワン・カペリも次のように語る。
「イタリアではモータースポーツもフェラーリも単なるスポーツではない。政治も経済も絡む、イタリアの象徴的な存在なんだ。だからレースにくわしくない人からも常に注目されているし、時にお家騒動も勃発する。モンテゼモロがこれまで行ってきた功績は素晴らしい。でも、何事にも終わりはある。残念ながら、モンテゼモロの時代は、もうすぐ終わるだろう」
(尾張正博)