2014年09月09日 21:01 弁護士ドットコム
ジャニーズ事務所の人気アイドルグループ「嵐」と「KAT-TUN」のメンバーが、無断で写真集を出されたとして出版社を訴え、損害賠償や販売差し止めを求めた。その裁判で、最高裁は8月中旬、メンバーらの請求を認め、出版社の上告を棄却した。
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これにより、出版社に約5400万円の支払いと出版・販売の差し止め、在庫廃棄を命じた判決が確定した。敗訴した「アールズ出版」は2005年から、メンバーのコンサート写真などを無断で使用した写真集「コンプリートお宝フォトファイル」など12冊を販売していた。
この裁判は、「パブリシティ権」という、あまり聞き慣れない権利をめぐり、約5年にわたって争われていた。このパブリシティ権とは何だろうか。梅村陽一郎弁護士に聞いた。
「芸能人・スポーツ選手など、タレントの見た目や名前――以下では、まとめて「肖像等」と言います――には、『顧客誘因力』があります。『顧客誘引力』とは、簡単にいうと、『人の目を引きつける力』のことです。
タレントがコマーシャルなどに起用されるのは、そのためです。
『パブリシティ権』は、こうした『顧客誘引力』を利用する権利のことです。権利を持っている人に無断で肖像等を利用すると、パブリシティ権の侵害となります」
それでは、タレントの写真や名前を勝手に利用したら、どんな場合でもパブリシティ権の侵害になってしますのだろうか。
「そういうわけではありません。『顧客吸引力』を有する人は、社会の注目を集める有名人でもあります。報道や批評など、無断で言及できるケースもあります」
それでは、パブリシティ権の侵害として、違法になるのはどんな場合だろう。
「判例で挙げられている侵害のパターンは、大きく分けると以下の3つとなります。
(1)肖像等を、それ自体独立して鑑賞の対象となる商品として使用する場合
(2)商品等の差別化を図る目的で、肖像等を商品等に付する場合
(3)肖像等を商品等に広告として使用する場合
こうした場合、もっぱら肖像等の『顧客誘因力』を利用することが目的と言えるからです」
今回の事案はどれに当てはまるだろう
「今回は(1)の場合にあたります。
問題となったのは写真集です。写真集は当然、その写真を鑑賞することが目的で作られるものですから、『肖像等それ自体独立して鑑賞の対象となる商品等として使用』にあてはまります。
こうした写真は、もっぱらメンバーの『顧客誘引力』を利用するものであるので、パブリシティ権を侵害するものと判断されました」
梅村弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
梅村 陽一郎(うめむら・よういちろう)弁護士
弁護士法人リバーシティ法律事務所 代表社員
千葉県弁護士会、千葉商科大学大学院客員教授、千葉大学法科大学院非常勤講師
著書「図解入門ビジネス最新著作権の基本と仕組みがよ~くわかる本」など
事務所名:弁護士法人リバーシティ法律事務所
事務所URL:http://www.rclo.jp/