2014年09月09日 11:21 弁護士ドットコム
大阪のファッションビルで働くアパレル店員のKさん(26歳・女性)は、「店の服を買いとらないと働けない」という店の「自腹ルール」に、頭を悩ませている。
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Kさんの働く売り場には「上下とも必ず、その店で売っている服を着なければならない」というルールがある。しかも、その商品が完売して売り場から消えると、もう店で着ることができなくなるという。
社員割引があり、定価の7割引で商品を買えるKさんだが、店の商品ラインアップはすぐに入れ替わってしまう。そのため、毎月2~3万円を、決して高いとはいえない給料の中から捻出しなければならない状態だという。
Kさんが疑問を抱くこんなルールは、法的に「アリ」なのだろうか。靱純也弁護士に聞いた。
「会社が福利厚生の一環として、自社製品を割引価格で販売し、従業員に自社製品の購入を薦めること自体は問題ありません。
しかし、会社は一般的に、従業員よりも強い立場にあります。会社がこの強い立場を利用して、従業員に対して自社製品等の購入を強制することは、問題です。
そうした場合は、公序良俗に反する商法として、従業員に対する不法行為が成立したり、売買契約自体が無効になる可能性があります」
過去には、こうした問題が、裁判になったこともあるという。
「下級審の裁判例ですが、商品代金全額の損害賠償を認めた例があります。これは、従業員が、10か月間で合計約18万円の自社製品(健康食品)を購入させられたケースでした。
この事案で、東京地裁は次のような判断を示して、原告(従業員)の請求を認めました。
『使用者としての立場を利用して、仕事をさせることにからめて従業員に不要な商品を購入させたものであるから、公序良俗に違反する商法であり、不法行為が成立する』(東京地裁H20.11.11)」
実際に損害賠償が認められたケースもあるようだ。もし、Kさんが店側を訴えたら、勝てる見込みはあるだろうか?
「Kさんの場合、割引率が大きいことや、商品が日常生活で使用する洋服である点で、事情が異なります。
しかし、仕事の際に着用する義務があること、完売後は店で着用できないこと、月2~3万円の商品を継続的に購入していることから考えると、不法行為等が成立する可能性は十分にあると思います」
このように、靱弁護士は指摘していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
靱 純也(うつぼ・じゅんや)弁護士
大手銀行、製薬会社勤務を経て2004年弁護士登録。交通事故、労働事件、債務整理、企業法務などに幅広く対応。気軽に相談できる弁護士を目指し無料法律相談に力をいれている。
事務所名:あゆみ法律事務所
事務所URL:http://www.ayumi-legal.jp/