2014年09月08日 19:51 弁護士ドットコム
9月9日は、司法試験の合格発表日だ。近年の法曹業界は、弁護士の数が増えたことによる就職難や、ロースクールの縮小・撤退など、なにかと暗い話題が多いように思える。メディアでも「弁護士になっても生活が苦しい」といった話題が、しばしば取り上げられている。
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業界の今後は、どうなるのだろうか。司法試験に受かった人たちは、無事食べていけるのだろうか。司法試験を取り巻く現状を「49」、「70」、「28」という、3つの数字から読み解いてみた。
司法試験と言えば、一昔前まで合格率が数パーセントの国内「最難関」試験とされてきたが、現在の合格率は約25%まで高まっている。
さらに、これを「ロースクールを卒業し、司法試験を受験した人が、最終的に合格したかどうか」(累積合格率)という観点でみると、「49.2%」に及んでいるのだ(2013年11月12日・法曹養成制度改革顧問会議・資料より)。
これはつまり、試験に挑んだ人のおよそ半分程度が、「最終的には合格している」ということだ。
さらに、ロースクールを累積合格率が高い順に並べた場合、上位10校の累積合格率は61.1%から80.1%で、平均で70%を超えている。このように合格率からみる司法試験は、旧制度から様変わりしていると言えるだろう。
だが、司法試験に合格したとしても、不安がすべてなくなるわけではない。
日弁連が2013年度(66期)の司法修習生を対象に実施したアンケートでは、司法修習生の「70%」が、修習を受ける上での経済的状況について、「不安がある」「やや不安がある」と答えたという。司法試験に合格後、7割もの司法修習生が、経済的な不安を抱えながら、修習に取り組んでいるのだ。
たとえば、国立ロースクール(既習コース)だと、入学金と2年間の授業料を合わせて約190万円かかるため、学資ローンや貸与奨学金のお世話になる人も多い。さらに合格後の司法修習時には基本的にバイト等が認められないため、多くの人が「貸与金制度」を利用して、300万円を借りることになる。
その2つだけでも、社会に出る際に約500万円の負債を抱えることになる。さらに受験時代の生活費や、資格試験予備校の費用等も考えると、予備試験や学費免除等の制度があるにせよ、法曹を目指すためには相当額の出費を覚悟しなければならない、と言えそうだ。
司法試験に合格し、司法修習を終了すると、いよいよ法曹としてのキャリアを一歩、踏み出すことになる。しかし、弁護士として働くためには、どこかの弁護士会に登録をしなければならない。そのため、弁護士志望者は修習が終わったタイミングで一斉に登録するのが通例だ。
しかし、最近では、就職先の事務所が決まってない等の事情から、司法修習が終わったタイミングで登録を行わない人が増えてきている。内閣府の法曹養成制度改革顧問会議で示された資料によると、今年(66期)は570名で、全体の「28%」にのぼっているのだ。
ただし、前年(65期)の数字をみると、未登録者数は翌月に半減し、1年後には2.5%まで下がっていた。そのため28%という数字だけを見て、「司法試験に合格しても弁護士として食べていけない!」と絶望するのは、少なくとも現時点では早いと言えそうだ。
これから弁護士登録をむかえる67期のある修習生は、「あくまで、私の感覚ですが」と断りながらも、「修習先で主体的に就職を探せば、弁護士会等のサポートもあって、最終的に何処かに就職できるチャンスが限りなく高いと感じます」と話していた。
以上、司法試験受験者・合格者のおかれた環境を表す、3つの数字を見てきた。これが良いのか、悪いのかは別にして、少なくともこれから法曹を目指す人は、業界のこうした状況をきちんと頭においておく必要があると言えそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)