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『F1速報』のイタリアGP決勝分析:ロズベルグを救ったボッタスの失敗

2014年09月08日 08:40  AUTOSPORT web

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2014年F1イタリアGP表彰式の光景
表彰台に登壇したドライバーに送られた賛辞は、三者三様でした。優勝したルイス・ハミルトンは表彰台の下に集まったファンから暖かい祝福を受け、2位のニコ・ロズベルグにはブーイング、3位のフェリペ・マッサには、フェラーリドライバーへのような大歓声と「フェリペ!」コールが送られていました。まさに情熱の国イタリア。観客からの“愛”が伝わってくるかのような、素晴らしいシーンでした。

 レースはメルセデスAMGが3位マッサに対して25秒の差を付ける圧勝劇。実は意外なことに、メルセデスAMGのワンツーフィニッシュは、オーストリアGP以来5戦ぶりのことなのです。

 確かに今回のメルセデスAMGは速く、強かったと思います。フロントロウを独占し、前述のように3位のドライバーに対して25秒の差をつけ、ファステストラップ(ハミルトン)も記録したわけですから。

 しかし、盤石の1-2フィニッシュというわけではなかったように思います。ウイリアムズのバルテリ・ボッタスがスタートに失敗していなければ、結果的に1-2フィニッシュだったとしても、もっと苦しんで手にすることになったはずです。検証してみましょう。

 3番手スタートのボッタスは、発進時の蹴り出しが悪く、1周目を終えた時点で11位までポジションを落としてしまいます。彼はここからニコ・ニュルケンベルグ、キミ・ライコネン、セルジオ・ペレス、フェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトン、ケビン・マグヌッセン、セバスチャン・ベッテルをかわして4位まで上がっていくわけですが、これら7台のマシンとバトルをするたびに、先頭との差が開きます。

 タイヤ交換を終え、ベッテルの前に出た時には、すでに先頭から40秒遅れとなっていました。しかしこれ以降、ボッタスと先頭のハミルトンとの差は広がることなく、40秒遅れでフィニッシュしています。つまり、終盤のボッタスのペースは、ハミルトンと同等だったということです。

 先頭のハミルトンはペースをコントロールしていたかもしれませんが、それを追う立場だったロズベルグは、結局ハミルトンに追いつけず。つまりあれが限界のペースだったということで、もしボッタスのスタートが上手く行っていたならば、大いに苦しめられたはずです。

 チームもかなりの手応えを感じていたようで、レース後にメカニックの白幡氏は「もっと上を狙っていたけど、仕方ない。さすがにメルセデスAMGは速いので、何かがない限り勝ちは難しいかもしれないけど。でも、勝ちたいな」と、その想いを語ってくれました。また、ボッタスはこの先すべてのレースについて自信を持っているようで、白幡メカニック曰く「シンガポールも、鈴鹿も大丈夫って言ってる」とのこと。ボッタスの初勝利は、今季中に達成できるのか? 今後にご注目いただきたいと思います。

 マッサの3位は精一杯の結果。10周目にハミルトンに抜かれるでは、ロズベルグと同等のペースで周回していましたが、その後はじりじりと引き離されてしまいました。急激に力をつけつつあるボッタスの存在のため、ナンバー1の座はもうボッタスにあるようにすら感じてしまいます。

 メルセデスのふたりは、ある意味対象的でした。スタートに失敗しながらも優勝を手にしたハミルトンと、好スタートを切りながらも、2位に甘んじたロズベルグ。ふたりの対比は、昨日までのコメントにも表れていました。ロズベルグは「他にも速いヤツがいるからなぁ」と決勝に向けた不安や懸念要素を示したのに対し、ハミルトンは「いつも通り戦うだけ」と発言。この、レースに対する自信の度合いが、結果にすべて繋がっているようにも思います。

 さて、メルセデス、ウイリアムズの後に続いたのは、レッドブルの2台でした。メルセデス製パワーユニットに対してはどうしても劣勢なルノー製パワーユニットユーザーにも関わらずこの位置をキープできたのは、上々の結果と言えるのではないでしょうか? 最高速計測地点でダニエル・リカルドが全体のトップを記録したのも驚きです。

 ベッテルは最初のタイヤ交換が早かったため、終盤にタイヤが劣化してしまい、リカルドの先行を許してしまいました。これは、ベッテルが最初のピットストップでマグヌッセンの前に出る“アグレッシブ”な戦略を採ったから。当時は、対リカルドよりも、対マグヌッセンを重視して戦略を組み立てていたはず。結果的にはマグヌッセンの前でフィニッシュしたので、作戦成功と言えるでしょう。

 これで、ベッテルは決勝でリカルドに3連敗。それどころか、両者が完走した際、ベッテルはリカルドに対して、まだ1回(ドイツGP)しか勝てていないのです。4年連続のチャンピオンとしては、非常に辛い立場に立たされました。

 レッドブルに続いたのは、マクラーレン、フェラーリ、フォースインディアの3チーム。常に接近線を繰り広げていました。特にフォースインディアは、土曜日のフリー走行から非常に良いペースでのロングランを敢行しており、それを考えれば7位という結果は、驚きでもなんでもありません。

 マクラーレンは常にライバルに攻められたり、前を塞がれたり……同チームの今井エンジニアも、「欲求が溜まるレースでしたね」との感想を語ってくれました。なおマクラーレンは最近、一発のタイムは非常に良いものの、ロングランに苦戦する傾向があるように思います。ロングランのペースが改善されない限り、マクラーレンが上位に進出するのは、難しいでしょう。

 フェラーリも終始集団の中に揉まれたチームでした。しかし、アロンソがERSのトラブルでリタイアしてしまったのは痛かった。アロンソは実は今季ここまで全戦で入賞してきた唯一のドライバーでしたが、今回のリタイアでシーズン初の無得点となってしまいました。それがフェラーリの母国……イタリアだったというのも実に皮肉です。

 メルセデスの強さと、危うさと、そしてウイリアムズの可能性が見えた今年のイタリアGP。ふたたびメルセデスが強さを増すのか? それともウイリアムズはまだ成長するのか? 今季残り6戦。まだまだ楽しみなレースが続きそうです。
(F1速報)