2014年09月07日 14:51 弁護士ドットコム
通販サイトのランキングに自社商品が掲載されるための秘策は「自演買い」――。税理士ドットコムの相談コーナーでは、自社商品を自ら購入する自演買いについて、個人事業主からの質問があった。
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大手通販サイトに出店している相談者は、自演買いが同業者の間で「当たり前のように横行している」「実際に(ランキングに)掲載されるとケタ違いの売上が約束されます」と説明する。そのうえで、自演買いのためにかかった商品代金が、広告宣伝費などの「経費」として認められるのかを聞いている。
相談者によると、自演買いをすると、出店料10%を差し引いた販売価格の90%が自社に入る仕組みのため、その商品だけでみると赤字になってしまう。だが、ランキング入りすることで、トータルでは黒字が見込めるのだという。「自演買い」でランキングを上げる行為の是非はともかくとして、このような場合の税務処理はどうなるのだろうか。宮原裕一税理士に聞いた。
「そこに商品がある限り、『自演買い』で戻ってきた商品は単なる在庫でしかありません。ですから、商品代金の全額が経費になることはありません。
1万円の商品を『自演買い』して、購入・決済をした場合を考えてみましょう。当然1万円のお金が出ていくわけですが、今回の相談者のケースですと、後日、出店料(10%)の1000円を差し引かれた9000円が戻ってきます」
出店料の1000円をどうとらえればいいのか。
「この1000円が経費となります。実質的には1万円はそのまま戻ってきて、広告費的に出店料1000円を支払ったに過ぎないのです。
もし、その商品が通販サイトの倉庫にあるような場合でも、新品の商品を自社に戻しただけで、その商品は再度出品できるわけですから、1万円で仕入れたことにもなりません。送料などが増えることにはなりますが、在庫品が自社と倉庫とを行き来しただけの話なのです」
商品の全額ではなく、出店料しか経費にならないとのことだ。
「ここで注意したいのは、消費税についてです。たとえ『自演買い』したものであっても、通販サイトのデータ上は、売上として計上されています。しかし、自社の経理では売上として計上されないので、売上金額に差が生じてしまいますよね。税務調査などの際に、しっかりとその理由を説明できるようにしておく必要があります」
このように宮原税理士は注意を促していた。
【取材協力税理士】
宮原 裕一(みやはら・ゆういち)税理士
1972年生まれのいわゆる団塊ジュニア。市販の会計ソフトでもっとも売れている弥生会計をもっとも使い倒す税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター(http://www.yayoi-meister.com)」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
事務所名:弥生マイスター・宮原裕一税理士事務所
事務所URL: http://www.ymtax.jp
(税理士ドットコムトピックス)