2014年09月07日 12:21 弁護士ドットコム
今週は金曜まで仕事で出張するので、土日は現地の観光を満喫したい――。出張日と週末の休日が連続した場合、こう考えるサラリーマンも多いだろう。ところが、インターネットのQ&Aサイトでは、会社から「待った」がかかったケースが投稿されていた。
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そこに寄せられた情報によると、投稿者は、出張先での仕事は金曜日までなので、土日に観光をしたいと上司に伝えたところ、「ちょっと後で相談しようか」とお茶を濁されて、困惑したのだそうだ。この相談者は、土日の宿泊代は自分で支払うが、帰りの交通費(新幹線代)は会社から支給されたお金を充てるつもりだという。
今回のようなケースでは、上司の許可を得る必要があるのだろうか。今春博弁護士に聞いた。
「出張に休暇を組み合わせるような行動は、少し前までは、あまり問題視もされなかったかもしれませんね。でも、法的には、注意が必要な行為です。
そもそも、出張とは、勤務先が労働者に対し、業務上の必要に応じて通常の勤務地とは異なる場所に出向くことを命じる業務命令のことです。ですから、出張中、労働者は勤務先の指揮命令に従わなければなりません」
でも、仕事が終わった後に出張先に残るのは、自由ではないだろうか。
「必ずしもそうとは言えないですね。通常、勤務先あるいは自宅と出張先との間の往復も、労働者の自由ということにはなりません。
『家に帰るまでが遠足』ではありませんが、やはり原則として、勤務先に戻るまでは、勤務先の指揮命令下にあると言わざるを得ないと思います」
では、相談者はやはり、土日の観光については許可が必要になるだろうか。
「はい。この相談者の場合、金曜には出張から帰る予定のところを、日曜まで現地に滞在したいとのことです。この日程は、さすがに勤務先の業務命令とは著しく乖離しますよね。ですから、上司に了承を得ておいたほうがいいでしょう」
許可なしで土日観光した場合、どんなリスクがあるだろうか。
「出張に付随する行為は、それが労働者の私的な行為などではない限り、労働災害につながる可能性があります。
たとえば、出張からの帰宅中に事故に遭ったとしたら、労働災害扱いになります。ところが、無断で帰宅を日曜日に遅らせていた場合、その取り扱いは一筋縄ではいかなくなってしまうことにもなります。
近年、企業のコンプライアンスが重要視されているため、企業側も出張後の観光などを簡単に許可できないことも多いでしょう」
もし、上司に黙って出張後の土日に現地で観光に行き、安全に帰ってこられたとしよう。金曜日に帰路についたと日付をごまかして旅費精算をしても、企業が支払う金額は同じなので、問題ないのではないか。
「いいえ。出張費等の実費精算についても、注意が必要です。労働者には、勤務先で定められた方式にしたがって報告、精算する義務がありますね。
そのため、実際とは異なる報告をして、出張費の精算を行ったような場合、勤務先から問題とされる可能性があります。もちろん、わざと水増しするなどの虚偽報告をしたような場合は論外です」
どうやら、黙って出張を「延長」するのは、会社員としてリスクが大きいようだ。ここは、上司の許可を得ておくのが安全といえそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
今春 博(いまはる・ひろし)弁護士
2002年弁護士登録。大阪弁護士会所属。労働紛争、交通事故、家事事件等を中心に取り扱う。労働紛争については、解雇・退職、残業代請求、労働災害、懲戒等、主には労働者側案件を専門とするが、使用者側も取り扱う。
事務所名:いぶき法律事務所
事務所URL:http://www.ibuki-lawoffice.com/