「鈴鹿でレースができるかどうかについては、正直な話いまは何も確実に言えることはないです。ただファンのみなさんに嘘はつきたくないので、乗れない可能性もあるのは事実です。でも、乗るための努力をしていることは間違いありません。かなり壮絶な戦いになると思いますが、なんとか頑張りたい」
これは日本GP出場について語った可夢偉のコメントである。
果たして、可夢偉が日本GPでレースできる可能性はどれくらいあるのだろうか。まずは日本GP前後のレーススケジュールを確認しておこう。
10月3日(金)~5日(日)F1第15戦日本GP(鈴鹿)
10月10日(金)~12日(日)WEC第5戦(富士)
10月18日(土)~19日(日)フォーミュラ・ルノー3.5(スペイン・ヘレス)
つまり、WECとスーパーフォーミュラに参戦しているアンドレ・ロッテラーも、フォーミュラ・ルノー3.5に出ているロベルト・メリも、日本GPには可夢偉と同様、物理的には出場可能である。可夢偉のライバルはロッテラーなのか、メリなのか、あるいは──。
ここで気になるのが、ロッテラーとケータハムを事実上支配しているコリン・コレスとの関係だ。というのも、当初ケータハムからイタリアGP出場を要請されていたのはロッテラーで、それを直前に断った経緯があるからである。
その件について、ロッテラーのマネージャーであるバーナー・ハインツに尋ねると、ハインツは驚くべき発言をした。
「アンドレはベルギーGPの1戦だけだと言っただろ。イタリアGPに出ないという決定も、アンドレではなく、私が断った。もうアンドレがケータハムに乗ることはない!!」
そこで筆者が「でもロッテラーは『チャンスがあれば鈴鹿に出たい』とベルギーGP後に語っていた」と話すと、ハインツは「アンドレが日本GPに出ることはない。日本GPでケータハムのマシンをドライブするのは、日本人だろう」と即答した。
別の、あるレース関係者も次のように語る。
「あえて鈴鹿で日本人ドライバーを外すような決定を、バーニーが許さないだろう。いや、バーニーだけではない。ガラガラのスタンドに囲まれてレースをすることを、ケータハム以外のチーム関係者だって望んでいないよ」
たとえシンガポールGPでシートを失う可能性があるとしても、鈴鹿には可夢偉が三たびレースドライバーとして帰ってきてほしい——これには可夢偉を応援する日本のファンだけでなく、F1全体の思いでもあるようだ。
(尾張正博)