2014年09月05日 14:21 弁護士ドットコム
世界にはさまざまな種類の税金があるが、歴史をひもといてみると、「こんな税があったのか」と驚くようなユニークな税金が存在していたことがわかる。たとえば、ロシアには1700年ごろ、ヒゲを生やしている貴族や商人から税金を徴収する「ヒゲ税」があった。
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また、フランスには「空気税」なる不思議な税の導入議論もあった。ルイ15世時代に、戦費や王室の浪費で苦境にある財政を立て直すため、財務長官シルエットが「空気」にまで課税しようとしたようだ。結局は国民の猛反発を受け、辞任に追い込まれた。
こういった歴史上のユニークな税金は、さまざまな税金の中でどう位置づければいいのだろうか。河原大輔税理士に聞いた。
「税金は『担税力』に応じて、公平とならなければなりません。『担税力』とは、経済的に負担できる能力のことです。所得・財産・消費のいずれかを判断基準にして、おおむね公平に課税するようになっています。
ただ、公平性を欠くとしても、政策目的の実現のために税金の負担を軽くしたり、重くしたりすることがあります」
負担を軽くするとは、どういうことだろうか。
「たとえば、2014年から始まった少額投資非課税制度(NISA)です。これは『貯蓄から投資へ』という政府の政策目的を実現させるための税の軽減措置です」
何らかの政策目的があるというのが、カギになるようだ。
「一方で負担を重くして、国民の行動を抑制することもあります。
たとえば、大阪府泉佐野市では 『犬税』の導入が真剣に議論されていました。結局、導入を断念しましたが、飼い犬の放置フン対策のために新たに課税するものでした」
では、歴史上の税金をどう位置づければいいのだろうか。
「歴史上の税金の中にも、負担を重くすることで、国民の行動を誘導したり、特定の政策を実現したりしようとするものが見受けられます」
どう働きかけようとしたのだろうか
「たとえば、ロシアの『ヒゲ税』は、1600年代の末にヨーロッパ視察でヒゲが流行らなくなったことを知ったピョートル1世が『ヒゲは品がない』と考えて導入したものです。国民の身だしなみを整えるよう、税金によって誘導しました。
比較的最近ですと、ハンガリーのポテトチップス税やデンマークの脂肪税など、肥満につながりやすい食品に課税して、国民を健康に導こうとしたものもあります。
また、特定の政策を実現するという意味では、江戸時代の5代将軍徳川綱吉が設けた『犬税』が挙げられます。綱吉は『生類憐れみの令』で有名ですが、この政策によって増えた野犬を保護するために税金を徴収したようです」
ただ、フランスの「空気税」のように、政策目的でも何でもなく、単に税金を多く取りたいという税金もあるようだ。
「政策目的とは関係なく、税収確保のためだけに、人々の暮らしに着目した税もあります。国民の生活や習慣に合わせるようにして導入した税金からは、その当時の時代背景が伺われます」
たとえば、どんなものがあるのだろうか。
「日本では、『トランプ類税』がありました。1957年に麻雀牌やトランプや花札の製造業者に対して、課税していました。1989年の消費税導入に伴って廃止されました。
また、江戸時代の京都では、家の間口の広さに応じて税金を課す『間口税』がありました。そのため、京都の民家では間口が狭くて細長い形が多くなりました。
海外でも、1789年のフランス革命後に導入された『戸窓税』では、戸や門、窓の数に応じて課税されました。第一次世界大戦まで100年以上続きました」
ほかにも「おしっこ税」「カエル税」「臆病税」など、さまざまなユニークな税金が歴史上に存在しているようだ。どんな狙いで導入されたのか、当時の時代背景を調べてみると、面白いかもしれない。
【取材協力税理士】
税理士・行政書士・MBA河原大輔
慶応義塾大学経済学部卒業後一部上場企業勤務を経て税理士登録。経済産業大臣認定経営革新等支援機関として補助金申請・事業再生・事業承継支援に取組む。
事務所名 : 河原会計事務所
事務所URL:http://www.keiei-kanri.com
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