2014年09月03日 10:31 弁護士ドットコム
2009年に死去した世界的スターのマイケル・ジャクソンさんに性的虐待を受けたとして、米カリフォルニア州の男性が損害賠償を求める訴訟を起こした。そんなニュースが8月上旬、世界中で話題を呼んだ。
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報道によると、訴訟を起こした30代の男性は、1980年代後半、10代の頃にジャクソンさんとCMで共演して以降、およそ4年間で100回以上の性的虐待を受けたと主張しているという。
日本のメディアも「マイケルを提訴」などとして、このニュースを報じているが、アメリカはともかく、日本の場合、故人を相手に裁判を起こすことはできるのだろうか。高木良平弁護士に聞いた。
「日本の民事訴訟では、死者を被告として訴訟を起こすことは、原則として認められません。訴状に記載された被告が死亡していることが分かれば、訴えは不適法として却下されることになります」
「原則として」認められないということは、例外もあるのだろうか?
「はい。原告が被告の死亡を知らずに提訴し、その相続人が訴訟に応じた場合ですが、これは非常にまれです。
過去には、訴状に記載した被告の表示が誤りだったとして、被告の名前を死者からその相続人に変える訂正が許された判例があります(大審院判決昭和11年3月11日)。
しかし、これはあくまで例外的なケースです」
それでは、亡くなった人を相手取って訴訟をしたい場合、日本ではどうすればいいのだろうか?
「相続人を相手に、訴訟をおこすことが考えられます。ただし、相続人全員が相続放棄をしてしまえば、もはや、どうすることもできません。
また、ジャクソンさんの裁判のように、20年以上も前の不法行為に基づく損害賠償請求をしても、時効(3年)または除斥期間(20年)満了を主張されておしまいでしょう(民法724条)」
やはり、亡くなった人を相手どって訴訟をするのは、生きている人を相手にする場合とは、ずいぶん勝手が違うようだ。
高木弁護士は「なお、刑法の名誉毀損罪は、相手が亡くなっていても成立し得る(刑法230条2項)ので、注意が必要です」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 良平(たかき・りょうへい)弁護士
2006年弁護士登録。マイケル・ジャクソンさんが全面無罪判決を勝ち取った刑事裁判により、無罪推定の原則の重要性と冤罪の撲滅に目覚め、主に刑事事件を取り扱っている。ジャクソンさんの追悼番組等にも出演している。
事務所名:桜丘法律事務所
事務所URL:http://www.sakuragaoka.gr.jp