2014年09月02日 18:41 弁護士ドットコム
東京・代々木公園から広がる「デング熱」にタレントも感染か――。TBSの情報番組「王様のブランチ」でリポーターをつとめるタレントの青木英李さん(25)と紗綾さん(20)が、8月下旬に代々木公園で昆虫採集のロケをした際に、蚊に刺されてデング熱に感染した可能性が高いと報じられている。
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報道によると、青木さんの所属事務所は「虫取りロケで蚊に刺されて感染した」と説明しているという。紗綾さんも8月27日のブログで「高熱でフラフラです・・・前回の熱が比にならないくらいきつーい」と書き込んでいる。
仕事中の事故の場合、「労災」が思い浮かぶが、もし仕事中に「デング熱」に感染したことが確実な場合、芸能事務所に所属するタレントにも労災は適用されるのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。
そもそも今回の「デング熱」は労災の対象になるのだろうか。
「この点については個別判断になりますが、労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令二十三号)別表第一の二における、労災補償の対象となる疾病の範囲を定めた『職業病リスト』(六の5あるいは十一)に該当し得るため、労災の対象になり得ます」
では、労災適用の条件はどうなっているのだろうか。
「労働災害が適用されるためには、労働者災害補償保険法上の『労働者』に該当する必要があります」
その「労働者」というのは、会社に雇われている、つまり会社と「雇用契約」を結んでいる必要があるのだろうか?
「一般的には『労働者』というと、会社と雇用契約を結んでいる人だけが対象になると思われがちです。しかし、雇用契約がなくても、実質的に『労働者』とみなされれば、労災の対象になります」
それならタレントにも可能性はありそうだ。実質的に労働者とみなされるというのは、どんな場合だろうか。
「その人が、会社の指揮監督下で『労務』を提供している。それに加えて、支払内容が労務の提供の対価、つまり『賃金』とみなされるような場合ですね。
この条件を満たせば、『労働者』として取り扱われ、労災認定される場合があります」
その「会社の指揮下で労務」というのは、どういうことだろうか?
「まず、『会社の指導監督下で労務を提供しているかどうか』を判断する際には、下記のようなポイントがあります。
(1)仕事の依頼や業務の指示などに対して、YES/NOを自由に言える立場か
(2)業務の内容や方法について、会社から指揮命令があるか
(3)労働の時間や場所について、ある程度拘束されているか
(4)本人以外のタレントに、仕事を代替させることが可能か
タレント本人に自由がなく、本人以外でも代役がつとまるような仕事をしているのであれば、『労働者性』が高まるでしょう」
それでは、『報酬が賃金とみなされるかどうか』は?
「たとえば、拘束時間や日数が当初の予定よりも延びたとき、それに応じて報酬が増えるようなら、報酬が『賃金』とみなされる可能性が高くなります。また、会社から源泉徴収をされている場合も、労働者性が強まります。
逆に、タレント本人が衣装代等を自己負担するなど、『独立した事業者』としての性質が強い場合や、タレントに対する報酬額が著しく高額な場合には、労働者性を弱める要素となります」
では、今回の2人の場合はどうなるのだろうか。
「さきほどの諸要素を総合考慮し、タレントごとに判断する必要があります。そして、もし『労働者』と判断されれば、契約内容が雇用契約ではなくても、労働災害が適用されることになります」
実際にどのような働き方をしていたかが、最も重要なポイントとなるということだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/