2014年09月01日 15:01 弁護士ドットコム
スマートフォンの契約で歯がゆい思いを抱いている利用者には朗報かもしれない。NHKの報道によると、総務省の有識者会議が今秋をめどに、携帯キャリアに対して、利用期間に関する周知を徹底し、契約期間の終了後に無料で解約できる期間を延長するよう促す方針をまとめる。
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一般的なスマートフォンの契約は、2年間の継続利用を条件として、基本料金や端末料金を割り引く制度となっている。ただ、契約終了から1カ月以内に利用者が「解約」を申し出ないと、2年契約が自動的に更新される。もし1カ月経ってから解約しようとすると、2年契約の途中解約として、解約金が発生する。たとえばドコモの場合、解約金として9500円を支払わなければならない。
利用者の中には、契約内容をよくわかっていなかったり、2年を迎えても更新時期に気付かなかったりする利用者もいるだろう。現状の仕組みにどんな問題があるのだろうか。「契約は無効だ」と訴えることはできないのか。消費者問題にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。
「現状は、期間を定めた契約と自動更新がセットになっています。
更新の場合には、解約金なしで解約できる期間がわずか1カ月に限られています。しかも更新月の利用者に対する周知も十分とは言えない仕組みになっています」
では、やはり問題があるのだろうか。
「はい。契約して最初の2年間はともかく、更新後の期間でも一律に解約金が発生することは、多くの利用者にとって不意打ちではないでしょうか。
すでに長期間利用した後なのに、解約金が発生すること自体、納得しがたいものでしょう」
では、「無効だ」と訴えた場合は、認められるのだろうか。
「更新後の契約解除料については、裁判も起きています。解除の影響で事業者に発生する『平均的損害』を超える解約金は無効であるという消費者契約法9条などを根拠に争われているのです。
しかし、高等裁判所レベルでは、各携帯キャリアの定める解約金の額が、解除の影響で各携帯キャリアに発生する『平均的損害』よりも低いとして、無効にはなっていません」
今の段階では、無効にすることは難しそうだ。だからこそ、総務省が動き出したと考えうることもできるだろう。
「現段階では、更新後の解約金は法律上無効とはされていませんが、利用者の十分な理解が得られないまま、長期間の利用後でも、解約金で利用者の利用期間を『縛る』ことは妥当とは思えません。
また、過度の『囲い込み』による競争上の問題も懸念されます。速やかに適切な仕組みに変えるべきです」
上田弁護士は問題点を指摘した。今後、仕組みが見直される場合には、利用者目線を大切にしてほしいところだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/