2014年08月31日 15:21 弁護士ドットコム
個人のスマホなのに、会社の業務連絡が「LINE」で次々やってくる――。インターネットのQ&Aサイトには、私物のスマートフォンであるにもかかわらず、会社の指示でLINEのグループに入らされ、時間を問わずに上司からやってくる連絡に悩まされている人の相談が書き込まれていた。
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この相談者は内勤であるにもかかわらず、業務連絡がLINEでやってくるそうだ。さらに、勤務時間外でも緊急性の低い連絡がメッセージで送られてくるという。相談者は「はっきり言って迷惑しています」とつづっている。
このような形で、プライベートなLINEアカウントに業務連絡が送られてくる状態に、法的な問題はないのだろうか。「迷惑だから」と会社にやめさせることはできないだろうか。吉成安友弁護士に聞いた。
吉成弁護士はまず、勤務時間内の利用について解説する。
「勤務時間内の場合、私物のスマートフォンを使用させたとしても、基本的に違法とまではいえないでしょう。
私物の携帯電話への業務連絡が違法とはいえないことと同じです。
企業の管理が行き届かない私物の携帯電話での連絡による情報流出のリスクは考えるべきですが、それとは別問題です」
では、勤務時間外の場合はどうなるのだろうか。
「勤務時間外の場合は、労働時間としてカウントされるのかどうかという疑問があると思います。
ただ、労働基準法上の労働時間とは、使用者(上司)の指揮命令下にある場合なのです。
LINEで業務連絡が届くことにより気分的に拘束感が生じたとしても、基本的に自由に行動できる状況であれば、使用者の指揮監督下にあるとはいえず、労働時間にはカウントされません」
連絡を強制したとしても変わらないのだろうか。
「勤務時間外に常時LINEのメッセージを受信できる状態にすることや、受信した場合に返事を送ることを義務づけたとしても、ただちに法定労働時間の規制が及ぶとはいえないでしょう」
なぜ、そういえるのだろうか。
「その日の業務が終わった後に、泊まりで事業所の見回りや非常事態への備えなどを行う宿直勤務が、『常態としてほとんど労働する必要のない』勤務として、労働基準法上の労働時間規制の範囲外に置かれていることが参考になるかと思います。
ただし、宿直勤務と同様に、一定の手当の支払いを求めることが可能な場合もあるでしょう」
では、結局、勤務時間内も勤務時間外も、違法性はないということか。
「通常のLINEの使用法からするとあまり考えられないかもしれませんが、在宅勤務として労働時間規制などの対象になる可能性もないとはいえないですし、過度の負担を強いて労働者の心身の健康を害した場合には、安全配慮義務違反の問題が生じることも考えられます。
また、法的には違法でないとしても、勤務時間外の業務連絡により労働者を疲弊させるようでは、生産性が低下し、労働者だけでなく企業のためにもならないと思います。
最近、フランスで、経済団体と労働組合の間で勤務時間外の業務メールを禁止する協定が結ばれたという報道がありましたが、企業が自主的に合理的な経営判断をしていくべきだと思います」
吉成弁護士はこう締めくくった。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
吉成 安友(よしなり・やすとも)弁護士
東京弁護士会会員。企業法務全般から、医療過誤、知財、離婚、相続、刑事弁護、消費者問題、交通事故、行政訴訟、労働問題等幅広く取り扱う。特に交渉、訴訟案件を得意とする。
事務所名:MYパートナーズ法律事務所
事務所URL:http://www.myp-lo.com/