2014年08月30日 16:31 弁護士ドットコム
壁を背にして立ち、相手から「ドン!」と手をつかれて、強引に告白を受ける――。こうした「壁ドン」が話題だ。女子にとってあこがれのシチュエーションだという。
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ところがこの「壁ドン」は、やられた側がうれしいとは限らないという声もある。ツイッターでは、「好きな相手以外だと恐怖しか感じないだろ」「キュンとくるのは二次元だけ。現実でされたら引くかも。」と言う声や、「彼氏以外の男にされたら110番するレベル」という声もある。
たしかに、いくら告白するためとはいえ、実際に壁に追い詰められて「ドン」とされたら恐怖を感じる人もいるだろう。「壁ドン」をされた女性が恐怖を感じたら、犯罪にあたることはあるのだろうか。篠田恵里香弁護士に聞いた。
「『壁ドン』は、好意を持っている相手であればよいですが、されたくない相手だった場合、相当な恐怖を感じそうですね。やり方によっては、犯罪になる可能性があります」
篠田弁護士はこう注意を呼びかける。具体的には、どういった罪に問われる可能性があるのだろうか。
「『壁ドン』が該当しうる犯罪としては暴行罪(刑法208条)が挙げられます。暴行罪における『暴行』とは、裁判例上、『人の身体に対する有形力の行使』とされています」
「壁ドン」の場合、相手の体に直接、触れるわけではないはずだ。それでも「人の身体に対する」といえるのだろうか。
「人の身体に向けられたものであれば、それが人の身体に直接接触することは必要ないとされています。
過去の裁判例でいうと、『怪我をさせる意図なく刀を振り回す行為』や『人の数歩手前に石を投げる行為』なども暴行罪が成立するとされています。『壁ドン』もあまりに勢いよく行った場合、暴行罪と判断される可能性が出てきます。
ただし、暴行罪は相手の同意があれば、成立しません。たとえば、『壁ドン』されても、相手が『好きな人からされて嬉しい』と感じている場合であれば、暴行にあたらないでしょう。こうした場合は、相手が同意していると言えますからね」
篠田弁護士はまた、「『壁ドン』そのものが、これらの犯罪に該当するわけではありませんが」と断ったうえで、シチュエーションしだいで、さまざまな犯罪が成立する可能性があると指摘していた。
「たとえば、『壁ドン』の際の発言によっては、脅迫罪(刑法222条)が成立する可能性があります。
また、つきまといを繰り返した場合は、ストーカー規制法違反となる可能性もあるでしょう。
その場から相手を逃げられなくした場合には、逮捕・監禁罪(刑法220条)の成立も考えられます。ただ、逮捕・監禁罪は、相当長い時間『身体を拘束している』場合や、『恐怖でその場から脱出できない』と判断されるケースに限られます。
あまり想定しがたいですが、実際に不当に長時間拘束した場合、逮捕・監禁罪が成立する可能性も皆無ではないと思います」
世のイケメン男性は、たとえ「オレなら許される」という確信をお持ちでも、女性がちょっとでも嫌がるそぶりを見せたら、すぐに「壁ドン」を中止してもらいたいものだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
篠田 恵里香(しのだ・えりか)弁護士
2008年に弁護士登録(東京弁護士会)。東京を拠点に活動。男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。多数のメディア番組に出演中。
事務所名:弁護士法人アディーレ法律事務所
事務所URL:http://www.adire.jp