2014年08月29日 21:11 弁護士ドットコム
東京拘置所と仙台拘置支所で8月29日、死刑囚2人の死刑が執行された。死刑執行を受けて、日本弁護士連合会は同日、死刑執行に抗議し、執行の停止を求める村越進会長の声明文を発表した。
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報道によると、2012年12月の第2次安倍政権の発足に伴い、谷垣禎一法務大臣が就任して以来、死刑執行は6回目。計11人の死刑が執行された。今回執行されたのは、2001年に青森県弘前市で「武富士」の支店を放火し、従業員5人を殺害した罪などで死刑が確定した小林光弘死刑囚(56)と、2001年から2005年にかけて、暴力団組長ら3人を殺害した罪などで死刑が確定した高見澤勤死刑囚(59)の2人。
声明文などによると、今回、仙台拘置支所で執行された小林死刑囚については、今月、第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求に向けた準備が進められていたという。声明文ではこの段階での執行について、「極めて遺憾」「強く抗議する」としている。
また、今年3月、静岡地裁が袴田巌氏の第2次再審請求事件について、再審を開始して、死刑執行を停止する決定をしたことに触れ、「もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた」「えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点がいっそう明らかになっていた」としている。
世界で死刑を廃止、停止している国は140カ国にのぼっており、「死刑廃止は国際的な趨勢」としている。
声明全文は以下の通り。
本日、東京拘置所及び仙台拘置支所において、各1名に対して死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣による6度目の執行であり、同大臣は就任以来、合計11名に対して死刑の執行を命じたことになる。仙台拘置支所において執行された被執行者は、今月、第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求を行うべく準備を進めていたとのことである。極めて遺憾であり、当連合会は改めて死刑執行に強く抗議する。
当連合会は、2013年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
本年3月27日には、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、極めて長期間死刑の恐怖の下で身体を拘束された結果、その心身に不調を来している。また、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。この袴田事件の再審開始決定により、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点がいっそう明らかになっていたのである。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2013年に実際に死刑を執行した国は、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は16年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の18州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、本年7月24日、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等を勧告している。
当連合会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。
2014年(平成26年)8月29日
日本弁護士連合会
会長 村越 進
(弁護士ドットコムニュース)