客商売をしていると、「それはないだろう」と言いたくなるふざけたお客に出くわすことがあります。先日「まんだらけ」が万引犯の写真を公開すると宣言して話題になりましたが、居酒屋だって防犯ビデオの画像を公開したくなることもあります。
私がまだ新人の頃、勤めていた居酒屋では午後11時半から午前0時ころまでが退店ラッシュとなっていました。最寄りの駅の終電が0時過ぎだったからです。その日も大学生の男性客が5~6人、終電間際に会計を済ませて店を出ていきました。(ライター:ナイン)
「お釣りが足りない。終電なくなる」と急かす
会計を担当していたアルバイトも終電があるのでと退勤したところ、入れ替わりに先ほどの大学生グループが戻ってきました。彼らが言うには、
「さっきのお釣り、5000円足りなかったんですけど…」
担当アルバイトとは、すぐに連絡が取れません。彼らは「終電があるので早くしてもらえますか」と急かします。私はひとまず店長にこの事態を報告しました。
多くの外食チェーンでは「POSレジ」というものが使われていて、売上とレジ金の誤差を計算できます。私は「レジ金のチェックしますか?」と店長に尋ねました。
その様子を見ていた大学生グループは、「あの、終電がなくなるんで」とさらに急かします。店長はこれ以上の引き止めは厳しいと判断したのか、レジを確認することなく5000円を彼らに渡しました。
しばらくして店が落ち着き、レジ金のチェックをすると、キレイに5000円のマイナスです。そう、私たちは大学生グループに騙されたのです。
今にして思えば、おカネを手にした彼らは、慌てて店を後にしていました。終電の問題かと思っていましたが、後ろめたさから逃げるように出ていっただけかもしれません。信用してしまった私たちが悪いのですが、この手口は他の店では通用しないでしょう。
「年齢確認」に素直に従ったかと思いきや
夏休みに多くなるのが、未成年飲酒です。羽目を外したくなるのでしょうね。それを店でも防止するため、若く見えるお客様には年齢確認を行います。
「お若く見えるんで、失礼ですが身分証明をご提示いただけますか?」
そういって、免許書や学生証などの生年月日を確認します。私たち従業員から見れば、ここでのお客様の出方で、未成年かどうかはすぐに分かります。
すでに成人されている方は「そうですかね。いやもう結構いってますよ」などと笑顔で言い、すんなり見せてくれます。未成年の場合は「今ありません」「ならいいです」などといい、不機嫌そうに店を後にする人もいます。
この日に来た人たちもそうでした。見た目は大学1年生くらいの男性グループ。私はいつものように年齢確認を行うと、「ありません」という答えが。私は「それでは申し訳ありませんが、お酒の提供はできません」と言いました。
すると意外にもあっさり「そうですか。分かりました」との答えが。少し安心していると、
「じゃあ、この近くに年齢確認しない店ありますか?」
と聞いてくるのです。もはや「私たちは未成年です」と公言しているようなものです。
こっちも仕事でやっているんだよ
私も居酒屋従業員の立場上、仮にそんな店を知っていたとしても堂々と言うはずがありません。「さぁ、それは分かりませんね」というと、
「チッ、何だよ。使えねぇな!」
と吐き捨てるように言われ、その人たちは出ていきました。
居酒屋やカラオケなどの店での年齢確認はつきものです。こんな態度を取られると「確認したこっちが悪いのかよ」と未成年者たちを叱責したくなります。確認するのも従業員たちは業務上やむを得なくやっていることを理解して欲しいものです。
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【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ