トップへ

AUTO GP王座獲得の佐藤公哉にインタビュー(2)「ゴールは、プロとしてお金をもらうこと」

2014年08月26日 19:10  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

今季、AUTO GPのチャンピオンを獲得した佐藤公哉
2013年からヨーロッパのビッグフォーミュラのひとつであるAUTO GPに参戦し、2年目となる今季見事チャンピオンを獲得した佐藤公哉。チャンピオンを決めた彼に、AUTO GPのタイトル獲得の実感と、気になる2015年以降のことについて語ってもらった。

佐藤公哉(以下KS):もちろん今も嬉しいですけれど、もう過去の出来事です。レースのある週末が終わって束の間の休息日があって、再びレースのある週末が始まったわけで、もう1週間も経とうとしていますから。まあ、年末のクリスマスや来年の正月くらいに、タイトル獲得をツマミにしてしみじみとお酒を飲むくらいですね。

──フォーミュラカーでの初めてのタイトル獲得という感慨はなかったですか?
KS:もちろん自分にとって初めてで、しかも大きなクルマで、ある程度は格式のあるカテゴリーでのタイトルですから嬉しいけれど、やはり過去の出来事です。チャンピオンになって、それを噛みしめてもいまひとつ味がしないのは、まだGP2で結果を出せていないからでしょう。でも、逆にそれがいいのかもしれません。こうやって過去の出来事と割り切れるのはそのお蔭かもしれません。自分を厳しく律することができます。

──AUTO GPでの仕事はケリがつきました。あとはGP2だけに集中して取り組めます。今後の見とおしはいかがでしょう?
KS:前大会のハンガリーから、ようやくクルマは普通になりました。右にハンドルを切ったら右に曲がるようになりました。前回の調子でスピードがあれば十分に上位で戦えると思います。あのときは予選途中2番手、予選最終4番手と、ずごく良い結果を残せました。あのクルマの調子を維持できれば今後もずっと、予選では悪くてもトップ10以内に入って居られると思います。シーズン終盤戦は、ひたすらそれを淡々とこなすだけ、1回できたことなのであとはただそれを繰り返すだけだと思います。でも、決勝はたいていムチャクチャな展開になる。レースはクルマと運で構成されていて、練習走行と予選はクルマですけど、決勝は運だと思っています。ドライバーはただコーナーが来たらブレーキを踏んでハンドルを切ってコーナーが終わったらアクセルを踏むだけです。

──このクラスのカテゴリーになると、ドライバーの能力に大きな差はないという意味ですか?
KS:ほとんど変わらないと思います。下のカテゴリーで勝ってきているドライバーばかりでもないでしょうけど、やはりある程度の経験があって、ライバルを倒して勝ち上がってきているドライバーがGP2に集まってきているわけですから。

──そんなカテゴリーで、ドライバーの腕だけで1秒も2秒も差がつくわけはないと。
KS:はい。予選はかなりタイム差が接近しています。だからこそ、ほんの少しクルマが決まっていないだけで、いつも上のドライバーが一気に下位へ落ちることもある。僕はこのカテゴリーをそう認識しています。

──最後に、来年以降に関してはどう考えていますか?
KS:報酬をもらえるドライバーになりたい。きちんと稼げるプロのドライバーになりたい。皆さんご存じのとおり、数あるスポーツの中でも、自動車レースはなかなかふざけたスポーツです。そうした世界であっても、まずはプロになりたい。カテゴリーにはこだわりません。お金を払って乗っているうちはしょせんアマチュアです。少しでもいいから、生活できるだけの報酬を得ることです。僕のゴール、成功は、その末に大金を稼げるプロのドライバーになることです。来年以降はその目標に向かって活動したいですね。

──以前、F1で長く走れるドライバーになりたいと言っていました。
KS:それにはこだわりません。直接F1チームと話した訳ではありませんが、乗るためにいくらかかるというその金額を聞くと、とてもおかしな話だと思いますし、F1に限らず大金をもらって乗れるなら、それが本当のプロでしょう。そういうプロになって長くキャリアを積む。そうして貯金を増やして老後を静かに過ごしたいですね(苦笑)。みんなが思っていて言わないだけで僕はズバリ言いますが、ひとつの成功の形として多額の報酬というのがあると思います。これはプロとしてもっともわかりやすいと思います。突き詰めてそこまでシンプルに考えてもいいと思います。自分の知名度も上がればそれは良いでしょうが、やはりビッグマネーを手にすることが成功であり力でもあると思います。レオナルド・ディカプリオの映画『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』でもそういうセリフがありましたし、ぜひみなさんも観て欲しいですね。

(2014年8月21日、ベルギー/スパフランコルシャンにて収録)

(Kojiro Ishii)