既存事業が頭打ちになり、経営者から「新しい事業の柱を探せ!」と大号令が掛かったものの、いいアイデアが出なかったり、いざ始めても軌道に乗らなかったりして行き詰っている会社は多い。そんな会社からすると、ITメガベンチャーに試行錯誤ができる人材が次々と現れる理由を知りたいに違いない。
今年5月に開催されたITベンチャーの祭典「IVS 2014 Spring」には、グリーとDeNAの取締役が登壇した。その中で、新規事業開拓を担当する「プロダクトマネージャーの育て方」について意見が交わされたようだ。
グリーやDeNAは「失敗すること」に慣れさせている
会の様子を記録したログミーの記事によると、新製品の責任者たるプロダクトマネージャーを育てるために、グリーの取締役執行役員である荒木英士氏は、「明確に、まず失敗することに慣れさせること」をやったという。
それまでグリーは少数精鋭のプロジェクトでヒット率が高かったため、「コケた」経験をした人が少なかった。しかし新しいものを作る以上、「絶対いつかコケる」「コケるのが普通」であり、新事業を担う人材にはその感覚に慣れさせるべきと考えたそうだ。
「プロジェクトがキャンセルになるとか、あるいは出したけどうまくいかなかったとか。でもそれって一つの学びだし、次に活かそうね、というようにして自分の失敗を乗り越える経験をとにかくいっぱい積ませることをやっています」
DeNAの取締役でマルチリージョンゲーム事業本部長兼事業戦略室長の小林賢治氏も、人材の育て方について「そういう意味では同じですね」と応じる。失敗や途中キャンセルをやった経験がない人が上に立っても「多分ダメなんですよね」という。
「そういう産業に属しているんだっていう感覚がやっぱ生まれないと勢いは出てこないなと思っていて。それを組織として学んでくると、デモチベーションしてる(モチベーションを下げる)感じでは全然なくなってくるんですよ。『くそ、次は絶対当てたるからな』みたいな」
しかし多くの日本企業では、「減点方式」が人事評価の根幹。大きな失敗をしない人だけが組織の上にのぼっていく。「当たり前だ」「何が悪いのか」と思っていた人も、グリーやDeNAの話と比べることで問題に気づくのではないか。
「失敗せず年齢を重ねれば出世」の日本企業
キャリコネの口コミを検索すると、「減点評価」がいかに日本企業に浸透しているかがよく分かる。ある大手電機メーカーに勤める20代後半の男性社員は、自社の「出世の掟」について、こう評している。
「大きな会社なので、出世のしやすさは、伝統的な日本の会社同様『年功序列』といっていいでしょう。(…)出世は減点方式で、当たり障りのないようにやれば、ある程度は出世するのではないでしょうか」
財閥系の情報システム会社で働く30代後半の男性も、同様の感覚を持っている。
「査定は減点方式なので、ほどほどに仕事をしていれば報酬が下がることはありません。しかし査定を上げる方法は難しく、かなりの業績を上げるか、年齢が上がるまで待つしかないような形でした」
このように「減点方式」を、強く否定的なニュアンスではなく「普通にやっていればある程度の昇進は見込める」と肯定的に捉える口コミは、大手企業に非常に多い。
有名大学を卒業して、大きな失敗もなく年齢を重ねた人が出世する組織では、あえて新しいことに挑戦してリスクを冒す必要はないということだ。
しかし、そのように出世した人が上にいる限り、リスクを冒す部下が高く評価されることはない。口だけで「新しいことをやれ」「失敗を恐れるな」と叫んでも、実態が伴わなければ本気で従う部下などいない。
財閥系自動車メーカーの20代社員は、社内には「失敗しないように」との減点主義の風潮が蔓延し、結果として「チャレンジしなくなり安全策を選択するため、(会社の)技術力も業務品質も(人の)業務スキルも向上しないまま陳腐化していく」と書き込んでいる。
◆キャリコネの口コミで「減点」を検索してみる
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