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インディカー第17戦ソノマ:混戦をディクソンが制す。琢磨は今季ベストの4位

2014年08月25日 12:50  AUTOSPORT web

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インディカー・シリーズ第17戦ソノマ/今季2勝目を飾ったスコット・ディクソン
カリフォルニア州ソノマで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第17戦。24日に行われた決勝レースは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が今季2勝目を挙げた。20番手からスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、今季自己ベストとなる4位でレースを終えた。

 大きな地震が早朝にあったソノマだが、サーキットや周辺地域に被害はなく、レースは予定通りに開催された。

 朝の30分間のウォームアップでは、予選3位のスコット・ディクソンが最速タイムをマーク。2番手には予選2位のジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン)がつけ、3番手にはロシア人ルーキーのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン)が入った。

 朝のプラクティスで苦戦していたのは佐藤琢磨。エンジントラブルで5周しか走れず18番手だった。ランキング2位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は琢磨のひとつ後ろの19番手。今年2勝しているマイク・コンウェイ(エド・カーペンター・レーシング)は21番手でポイント3位のサイモン・ペジナウ(シュミット・ピーターソン・ハミルトン・モータースポーツ)はブービーの21番手だった。

 午後1時40分に切られたスタートでは、ポールポジションのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が難なくトップをキープ。しかし、その後方で彼とチャンピオンの座を争っているカストロネベスが御乱心。すぐ前方を行く予選4位だったジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)にターン2の入り口で激しく追突し、ヒンチクリフをスピンさせ、自らのフロントウイングにダメージを与え、後続に大混乱を巻き起こした。カストロネベスは予選6位から1周で12番手までダウンし、新しいウイングを装着するためにピットに向って最後尾近くまで後退した。

 パワーの2番手のポジションをを保ったニューガーデンとの差をどんどん広げていった。15周目、ふたりの差は10秒近くにもなっていた。

 17周を終えたところでパワーは1回目のピットストップ。それを終えてもパワーはトップを守った。しかし、36周目に出された3回目のフルコースコーションで彼のシナリオに狂いが生じた。コーションの原因はターン7でカストロネベスがまたしても起こした接触事故だった。サイド・バイ・サイドでポジション争いをしていたライアン・ブリスコ(チップ・ガナッシ)とセバスチャン・ブルデー(KVSHレーシング)のさらにイン側へと飛び込んでブルデイにヒット。そのあおりを喰ってセバスチャン・サーベドラ(KV/AFSレーシング)もダメージを被った。


 40周目にリスタートが切られると、8番手を走っていたパワーは、ターン7の立ち上がりで単独スピンを冒した。アクセル・オンが僅かに早過ぎ、同時にラフだったためのようだった。これでパワーの順位はカストロネベスよりふたつ後ろの20番手となった。

 そして、レースはカストロネベスが引き起こしたフルコース・コーションのひとつ前、トラブルでコースにストップしたカルロス・ヒュータス(デイル・コイン・レーシング)によって出された30~34周目のコーション中にピットで給油した面々が有利な展開となった。

 トップに躍り出たのはトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)で、2番手はコンウェイ、3番手はブリスコとなり、4、5番手はグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)と琢磨。その後方にはブルデー、さらにはセオリー通りの戦い方で上位を保ち続けていたディクソン、ニューガーデンが続いていた。

 トップを走行するカナーンはブラックタイヤ装着で、レッドタイヤを履いていたコンウェイがトップを奪う。朝のプラクティスでは惨憺たる走りとなっていた彼が今季3勝目を飾るかもしれない。そう感じさせるだけのスピードがこの時のコンウェイにはあった。

 しかし、コンウェイは最後のピットタイミングが60周目で、残り25周を1タンクで走らねばならない状況となった。カナーンは早めにピットに入り、燃料不足の心配を解消した。彼はひとつ前のピットで燃料をフルに入れていなかったのかもしれない。

 逃げるコンウェイをたぐり寄せ、豪快なアタックでパスしトップに立ったのはレイホールだった。しかし、彼もコンウェイ以上に燃費が厳しい状況にあった。勝利のチャンスがあるとすれば、それは終盤にもう一度フルコースコーションが出されることだった。


 琢磨はカーペンターより1周後にピットイン。ここで運悪く、ピットアウトのタイミングで彼らのすぐ前のピットボックスへとマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)がアプローチしており、琢磨はピットからのダッシュを一瞬待たされた。その結果、琢磨はディクソン、ハンター-レイ、パジェノー、モントーヤに先行を許すこととなった。

 ゴールまで12周の時点でも先頭はレイホールのまま。2番手以下にはコンウェイ、ディクソン、ハンター-レイ、ペジナウ、モントーヤ、琢磨が続いていた。


 レイホールの燃料はゴールまで持つのか? それは非常に難しいことと見えていた。そして残り4周というところで彼のマシンはピットロードへ。トップはコンウェイの手に戻った。しかし、その直後にディクソンがアタック。ターン1からターン2で一気にディクソンが前に出た。85周のレースが83周目に入ったところだった。燃費の厳しいコンウェイはペースを保ち続けることができなくなり、この後すぐにハンター-レイにもパスを許し、さらにはゴール目前の最終コーナーで燃料が底をついて急失速。ペジナウ、琢磨らに次々パスされ、14位にまで転落してのゴールとなった。

 優勝はディクソン。ミド・オハイオでの最後尾グリッドからの勝利に続く今季2勝目となった。

「凄いレースだった。作戦がチームによって異なり、難しい戦いになっていた。誰が最後まで走れるだけの燃料を積んでいるのかがハッキリしていなかった。そうした戦いで勝つことができたんだから嬉しい。地震にも関わらずサーキットに来てくれたファンにも感謝する。今季2勝目は本当に嬉しい。今年はチャンピオン争いができなかったが、シーズン終盤のこの勢いを来シーズンまで保ち、2015年には最初から優勝争いを続け、チャンピオンの座を争いたい」とディクソンは語った。

 2位はハンター-レイ。3位はペジナウ。彼らふたりのホンダドライバーたちは、最終戦フォンタナでの大逆転タイトルに望みを残した。ハンター-レイはパワーがプラクティスに出走した時点でチャンピオンの可能性を失うが、パジェノーにはまだ僅かだが初タイトルの可能性はある。

 パワーは12番手で最終ラップを迎えたが、燃料切れで失速したドライバーが出たことで10位でフィニッシュ。対するカストロネベスはとうとう最後まで後方集団から抜出せずに18位でゴールした。この結果、パワーはチャンピオンシップ・ポイントを626点に伸ばし、カストロネベスが575点となって、ふたりのチームメイト間の差は第16戦終了時点の39点から51点へと広がった。ポイント3番手はペジナウで545点。パワーとは81点、カストロネベスとは30点差だ。

 琢磨は20番手スタートから今季自己ベストとなる4位フィニッシュを達成した。「レース前半のコーションで何度も燃料を入れる作戦が成功した。チームが良い作戦を立ててくれた。クルーたちのピット作業も速かった。最後の2スティントは燃費が凄く厳しかったけれど、目標とした数字を達成し、ゴール前5周ぐらいで燃費の心配がなくなってからアタック。ファン・パブロ・モントーヤをパスできた。そうしたら最終ラップにマイク・コンウェイが失速。4位でのゴールとなった」

「今年は不運に見舞われ続けて来ているので、今日はマシンも良かったし、少しの運もあって上位でのフィニッシュができ、チームも大喜びしてくれている」と琢磨も満面の笑顔だった。

「これで最終戦にムードを上げて臨むことができる」と、来週行われる今年最後のレースへの意気込みも新たにしていた。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)