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AUTO GP王座獲得の佐藤公哉にインタビュー(1)「タイトルは残り3周から考え始めた」

2014年08月23日 23:10  AUTOSPORT web

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AUTO GP ニュルブルクリンク チャンピオンを獲得した佐藤公哉とユーロノバ代表のビンツェンツォ・ソスピリ
2013年からヨーロッパのビッグフォーミュラのひとつであるAUTO GPに参戦し、2年目となる今季見事チャンピオンを獲得した佐藤公哉。チャンピオンを決めた彼に、AUTO GPの今シーズンを振り返りながら、並行して参戦するGP2での苦悩について語ってもらった。

●2年目のAUTO GP参戦の裏側
──昨年はAUTO GPを戦って最多勝を取ったけれど、残念ながらチャンピオンは逃してランキング2位でした。シーズン終了後、今年に関してはどのシリーズを戦おうと考えていたのですか?
佐藤公哉(以下KS):もう1年AUTO GPなのか、それともGP2なのか、いろいろ考えていましたけれど、行けるならF1と考えていました。

──F1に行ける状況ではなかったと?
KS:はい。結果的にGP2がメインで、さらにAUTO GPにも出るようになりました。AUTO GPも、出るからには勝たなきゃいけません。あとAUTO GPに関しては昨年、スーパーノバに比べると圧倒的にクルマが負けていましたけれど、冬の間にチームがすごく頑張って、乗りやすくてしかも速いクルマ、ちゃんとタイムが出るクルマを作ってくれた。予選では普通にトップ3を取れる。決勝では周りがペースを落として、僕は普通に走っているだけで、気が付いたときにはトップに立っている、というのが今年のAUTO GPでの僕の状況でした。

──GP2はもちろんAUTO GPにも前向きに取り組んでいたということですか?
KS:やるからには、そうでした。

──並行してふたつのシリーズに参戦する状況に関して、心配事や不安はありませんでしたか?
KS:もちろん、似たようなクルマとはいえ、やはりコンストラクターも素性も違います。AUTO GPは古いクルマで、GP2は新しいクルマです。タイヤもAUTO GPはクムホでGP2はピレリです。だから、ドライビングの面で混乱しちゃうんじゃないかとか、いろいろありしたけれど、実際に並行して戦ってみると大きな違いもなく、問題はありませんでした。両方ともそつなく乗れましたし、速いか遅いか、タイムはどうかというのは、クルマのセットアップによるもの、その週末に自分が持っている運とクルマ次第というだけの話です。

──シーズン前半戦、GP2でなかなか思いどおりの成績を残せなかったというのは、単にクルマのセットアップが決まっていなかっただけですか?
KS:もちろんそれだけではなく、僕のミスもありました。バルセロナではピットレーンで速度違反してしまいました。ただ、クルマの問題はやはり大きくて、僕の相方もシーズン前半は、はっきり言って苦しんでいました。彼はたしかに成績を残しましたが、混乱の中で堅いレースして上位へ行っただけでした。純粋な速さを示す予選での順位は、彼のいる13番手くらいから僕のいる17番手くらいを2台ともさまよっていたわけです。はっきり言ってセットアップが決まっていないクルマ、悪いクルマですよね。それに加えて運ですよね。

●タイトルを獲ろうと思ったのは……
──AUTO GPとGP2を並行して戦うことで、良かった点や場面はありますか?
KS:特には感じていませんでした。たしかに走行距離を稼げるとか、ほかの人が乗っていないときに乗れるという見方はあるでしょうが、大きなメリットとは感じません。速いドライバーは、どれだけ日にちで間が空こうが、ポンと乗って速いでしょうし。僕は単にふたつのカテゴリーを淡々と戦ってきただけ、淡々と作業をこなしてきただけです。

──長い期間乗れないよりは乗っていて良かったという気持ちもありませんか?
KS:先ほどの言い方は誤解を招きますね。無いよりは良いよねという感じでした。

──AUTO GPでは、今季の開幕戦からすでにタイトルを取れるという手応えがありましたか?
KS:普通にやれば取れると思っていました。ただ、今年の僕はGP2がメインであって、AUTO GPをずっと戦い続ける予定ではありませんでしたし、考えてもいませんでした。時間があればAUTO GPにも出るというくらいでした。だからタイトルのこともまったく考えていませんでしたし、たまたま今年のマラケシュの大会が良かったのも、それは昨年もウチのチームは良かったし、それだけの理由だろうと感じていました。スーパーノバをはじめほかのチームも、シーズンが進めばもっと戦闘力を上げてくるだろうとしか考えていませんでした。

──では、本気になってAUTO GPのタイトルを取りにいこうと思ったのはいつでしたか? 先日のニュルブルクリンクの大会ですか?
KS:その前からタイトルを取りたいとは言っていましたが、心の底から取りたいと思ったのは正直に言って、タイトルを決めたニュルブルクリンクの決勝レース2の残り3周くらいからでしたね。あ、じゃあ、取ろうと。

──では、それまでは取れなくても別に良いと思っていたと?
KS:特に気にしていなかったですね。本当に結果が欲しいのは、いまはGP2です。

──とはいえ、AUTO GPのタイトルを決めたレースのあとのパルクフェルメでの行動や記者会見での言動などは、素直に嬉しさを表していたように見えました。
KS:はい。素直に嬉しかった。涙を見せたのにも理由があって、ウチのジャンルカというチーフメカがずっと頑張ってくれていたからです。休んでいい日も休まず、クルマのセットアップのことだけを考えてくれていました。彼の努力があっての僕のタイトル獲得ですから。それは僕の持っていた運のひとつと言えます。もちろん彼ひとりの力ではありませんが、ジャンルカが死ぬ気で仕事に取り組んでくれたからこその僕のタイトル獲得でした。だから、パルクフェルメで彼の顔を見たときは本当に感動しましたし、彼も涙を流して喜んでくれました。タイトルを取ったという喜びよりも、彼の努力に報いることができたという喜びです。

<<第2回に続く>>

(Kojiro Ishii)