2014年08月22日 13:41 弁護士ドットコム
体と心の性が一致しない「性同一性障害」の人について、戸籍上の「性別変更」を認める特例法の施行から10年がたった。性別変更を行う人は年々、増加している。一般社団法人「gid.jp 日本性同一性障害と共に生きる人々の会」のサイトによると、2012年には年間700人を超え、通算で3500人を超える人が性別の取り扱いを変更したという。
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一方で、性同一性障害に悩む人は全国に4万6000人いるという推計もある。これは、実際に性別変更を受けた人の数と比べると、大きな隔たりがある。「生殖腺がないこと」など性別変更が認められるための条件の厳しさが、その要因の一つと言われている。WHOなどの国連機関も今年5月、「生殖腺除去手術」を性別変更の前提条件としていることを批判する文書を公開した。
現在の日本で、性別変更を認めてもらうためには、具体的にどのような条件を満たさなければならないのだろうか。藤元達弥弁護士に話を聞いた。
「性別変更の要件は、『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』に定められています。その要件は、次の通りです。
(1)2人以上の医師により、性同一性障害であることが診断されていること
(2)20歳以上であること
(3)現に婚姻をしていないこと
(4)現に未成年の子がいないこと
(5)生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
(6)他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること。
以上の6要件を満たしている場合、診断書などの必要書類を準備し、家庭裁判所に審判の申立てを行うことにより、性別変更が認められます」
ほかはともかく、(5)と(6)については、「手術」が必要だろう。
「はい。(5)と(6)を満たすためには、性別適合手術を受ける必要があります。
MTF(身体的には男性であるが性自認が女性)の場合、精巣摘出、陰茎切除が必要です。
FTM(身体的には女性であるが性自認が男性)の場合、子宮卵巣摘出が必要です。通常は、乳房切除も行います」
負担が、かなり大きそうな手術だ。
「性別適合手術については、受けられない、もしくは受けることを望まない人もいます。
その理由は、『費用が高額である』、『身体的負担が大きい』、『将来的に子を作れるように生殖機能は残したい』、『手術を受けても希望する身体にはなれない』などが多いでしょうか」
どんなに性同一性障害に苦しんでいても、そうした理由で手術が受けられないと、性別変更は認められないわけだ。
「そうですね。性別変更が認められない場合のデメリットはいくつもあります。たとえば、パートナーと結婚できないこともその一つです。この場合、結婚した夫婦とくらべて、社会生活上、不安定な立場に置かれます」
藤元弁護士はこのように指摘していた。
身体面でも費用面でも、とても負担の大きい手術を、性別変更の要件としていることは、どこまで妥当なのか。もし要件を緩めると、どんな問題が生じる可能性があるのか。今後、議論をもっと深めていく必要がありそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
藤元 達弥(ふじもと・たつや)弁護士
2010年に弁護士登録(東京弁護士会)。新宿二丁目近くに法律事務所を開業し、LGBT当事者からの法律相談や、案件依頼に積極的に応じている。
事務所名:藤元法律事務所
事務所URL:http://fujimotolo.com/