2014年08月20日 20:41 弁護士ドットコム
東京・中野の中古ショップ「まんだらけ」が、万引き犯の顔写真を公開すると宣言し、話題を呼んだ問題は、容疑者のアルバイト男性(50)が8月19日に逮捕されたことで、新たな展開を迎えた。
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報道によると、男性は8月4日午後5時ごろ、まんだらけ中野店で、ブリキ製の「鉄人28号」の人形を盗んだ疑いが持たれている。その3日後、中野区にある古物店で、その人形を売却したのだとされる。まんだらけの店頭では27万円で売られていた人形だが、古物店の買い取り額は6万4000円だったという。
モノを盗むのは「窃盗」の罪だが、盗むだけでなく、盗んだ品をどこかの店に売った場合、また別の犯罪となるのだろうか。刑事事件にくわしい田沢剛弁護士に聞いた。
「そもそも、ある行為を法律で禁止することの背景には、必ず『守るべき何らかの利益』があります。これを『保護法益』といいます」
田沢弁護士はこのように切り出した。
「窃盗罪の保護法益は、『人が平穏にモノを支配している状態』で、究極的には『所有権』などを守ることだと考えられています。
所有権は、モノが盗まれた時点で、十分に侵害されてしまいます。その後にモノが壊されたり、売られたりしても、所有権がそれ以上侵害されるわけでも、他の権利が侵害されるわけでもありません」
つまり、盗んだ物を誰かに売っても、新たに権利が侵害されるわけではないということだ。そうなると、万引きの後に、物を売る行為はどうなるのか?
「もとの所有者との関係では、何ら犯罪にはならないということです」
「一方で、万引き犯が、盗んだ品物を『自分の物』として古物店に売りつけ、古物店がそれと知らずに買い取ってしまったという場合には、窃盗罪とは全く別の『詐欺罪』(刑法246条1項)が成立します。
万引き犯が持ち主であると信じて購入した古物店は、騙されて代金を支払わされたことになります。この場合、さきほどの窃盗罪とは、全く別の人の、別の権利が侵害されています。したがって、新たな犯罪になるわけです」
「ただ、あくまで仮定の話ですが、古物店が『盗品だ』とわかったうえで買った場合なら、少し事情が変わってきます」
どういうことだろうか。
「まず、万引き犯が古物店を騙そうとしたけれども、古物店が盗品であることを見抜いたうえで、あえて買い取ったというケースですね。
その場合、古物店は騙されていませんから、売った側は『詐欺未遂』の罪になります。
こうした場合、店側も『盗品等譲受罪(刑法256条1項、2項)』で罰せられます。こうした行為は、もとの所有者が盗品を取り戻すことを難しくしてしまうからです」
田沢弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp