2014年08月18日 21:11 弁護士ドットコム
福島の原発事故後に国と県がとった安全対策に問題があったとして、福島県に住んでいた子どもとその保護者たちが、1人10万円の慰謝料を求める裁判を起こす。8月29日に福島地裁に提訴する予定だ。それに先立って、原告予定者と弁護士が8月18日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。
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会見したのは、2011年3月の福島第一原発の事故から5カ月後に、福島県郡山市から静岡県へ家族を連れて避難した長谷川克己さんと、原告側弁護団の柳原敏夫弁護士。長谷川さんらは、国と福島県の責任について、原発事故のあと福島県の子どもたちの健康を守る義務があったのに、それを怠って無用な被ばくをさせ、精神的苦痛を与えたとしている。
今回の裁判の支援団体である「ふくしま集団疎開裁判の会」によると、自主的に避難した人も原告に加わることができ、現在も募集中だという。慰謝料の請求額を1人あたり10万円とした理由については、高額な慰謝料を求めるのではなく、国や福島県がとった対策が違法であることを確認するためだとしている。
記者会見で、柳原弁護士は「原発事故の被ばくによって、目に見えない過酷な戦火の中に福島の子どもたちは閉じ込められ、命の危機にさらされている」「日本政府は福島の子どもたちに国際法上の犯罪である『人道に対する罪』をおかしている」と訴えた。
弁護団によると、原発事故当時18歳以下だった約37万人を対象に福島県が実施した甲状腺検査では、今年3月までに89人が「悪性または悪性の疑い」と診断されている。これはチェルノブイリ原発事故後3年間のベラルーシと比べても、発症率が高いのだという。
原告予定者を代表して記者会見にのぞんだ長谷川さんは、現在、妻と2人の子どもとともに静岡県富士宮市で暮らしている。原発事故のあと、個人的にガイガーカウンターを使って、付近の放射線量を調べた。その結果、「自分の子どもは自分で守る」という考えに至り、自主避難を決めたという。
長谷川さんは、国と県に対して慰謝料を求める裁判に、8歳の長男とともに参加する。「なぜ、政府は事故直後、『ただちに影響がない』というメッセージを国民に連呼したのか。原発事故が起きてから政府、福島県がやってきたのは、私にとって理不尽の連続だった。このまま理不尽に屈するわけにはいかない、という思いがある」と提訴を決意した理由を語った。
さらに長谷川さんは「子どもの親として、この時代の大人として、真実を明らかにし、今からでも最善の処置を施していくことが、私にできる責任だと考えている。声を上げれば波風が立つということは、十分承知している。それでも、やらなければならないことがある」と強く訴えていた。
(弁護士ドットコムニュース)