2014年08月17日 13:11 弁護士ドットコム
「離婚の時に払われる慰謝料には税金がかからないのでしょうか?」。インターネットのQ&Aサイトに、こんな素朴な疑問が書き込まれていた。パートナーに浮気されて慰謝料をもらう場合、国に税金をとられるのは、どこか釈然としないということかもしれない。
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離婚すると、慰謝料や財産分与などの名目で金銭が支払われることがあるが、それらに贈与税などの税金はかかるのだろうか。また、金銭でなく不動産などで受け取った場合はどうなのだろうか。
たとえば、ある女性は、夫が会社の部下と不倫したのをきっかけに離婚することになり、「離婚の示談金と不倫の慰謝料」を合わせて280万円を受け取った。さらに、財産分与として持ち家を引き取り、養育費として毎月8万円を払ってもらうことになったという。この場合、税金はどうなるのか。中野克美税理士に聞いた。
「まずは、離婚の示談金と不倫の慰謝料を受け取った場合について考えてみましょう。
所得税法の施行令に『心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料』については非課税にするという規定があります。示談金も同様に非課税となります。
ですので、離婚の示談金と不倫の慰謝料を合わせて280万円を受け取ったケースでは、税金はかかりません。
ただし、これらの示談金や慰謝料は、『心身または資産に加えられた損害に基因して支払いを受けるもの』(所得税法施行令)でなければ、非課税になりません」
どういった意味だろうか。
「たとえば、支払い名目は慰謝料であっても、その実体が財産分与、生活費、養育費である場合には、実体を見極めたうえで、非課税かどうか判断されます」
名目ではなく、実質として、示談金や慰謝料といえるのかどうかが重要なようだ。
では、持ち家を財産分与した場合は、どうなるのだろうか。
「離婚に伴う財産分与は、夫婦の財産の清算や、離婚後の生活保障のために給付されるものです。
財産分与をした財産の額が明らかに大きすぎるなどの例外を除いて、財産を取得することは、贈与とはみなされません」
では、持ち家の財産分与も非課税なのだろうか。
「いいえ、財産分与が金銭ではなく不動産である場合は、財産を譲渡したこととなり、譲渡所得の課税対象となります。
離婚により持ち家を財産分与したケースでは、財産分与をした側(夫)に所得税が課税されます」
財産分与が不動産の場合は注意が必要だ。
では、養育費についてはどうだろうか。
「相続税法では、『扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの』については、贈与税の課税価格対象としないと定めています。
養育費は子どもの『扶養義務』に基づくものですから、『通常必要と認められるもの』であれば、贈与税はかかりません。
ですから、養育費を毎月8万円受け取ったケースでは、税金はかかりません」
法律で定められた「通常必要と認められるもの」とは、どういった意味だろうか。
「生活費や教育費(学費や教材費、文具費)として、必要に応じて取得した財産のことです。
ですので、将来の分まで一括して受け取って、銀行に預金するような場合は、『通常必要と認められるもの』に該当しないと判断されることがあります」
状況に応じて、税金がかかるかどうかは変わってくるようだ。離婚して養育費をもらう場合は、注意したほうがいいだろう。
【取材協力税理士】
中野 克美(なかの・かつみ)税理士
大学卒業後税理士業界に勤務。税理士登録後は80人規模の税理士法人のパートナーに就任し、責任者として支店の新規出店、税理士事務所との合併、会社設立サポート、会社設立直後の社長に対する資金調達サポート、経理合理化などの業務に携わる。税理士事務所開業後は、「起業家の勇気ある挑戦を成功に導くこと」を志命に、資金調達や経理合理化などスタートアップの支援に日々取り組んでいる。
事務所名 税理士事務所パピィプロジェクト
事務所URL:http://pappy-zeirishi.com/
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