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「外国人は生活保護法の適用外」 最高裁判決が「行政実務」に与える影響は?

2014年08月10日 19:51  弁護士ドットコム

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日本で生まれ育ち、永住資格を持っている中国籍の女性(82)が、大分市に生活保護を申請したが、却下された。それは違法だとして、女性が「処分の取り消し」を求めた裁判で、最高裁は7月中旬、「外国人に生活保護法は適用されない」という判断を示し、訴えを退けた。


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2審の福岡高裁は「一定の範囲の外国人には生活保護が準用される」と判断して、大分市の処分を取り消す判決を下していたが、最高裁はそれを破棄し、2審とは逆の判断を示した。最高裁は、永住外国人は「生活保護法の適用対象」に含まれないとしたのだ。



ただ、現在は永住外国人に対して、自治体の裁量で生活保護費が支給されており、この中国籍の女性も、却下後に行った保護申請が認められている。今回の最高裁判決は、こうした状況に何か影響を与えるのだろうか。行政法にくわしい湯川二朗弁護士に聞いた。



●判決は「行政の実務に影響しない」


「今回の最高裁判決が、現在の行政実務に及ぼす影響はありません。判例としての価値もなく、そのため、最高裁のホームページにも掲載されていません」



湯川弁護士はこのように切り出した。いったいどういうことなのだろうか?



「判決の『外国人は生活保護法に基づく保護の対象とならない』という結論だけをみると、判決はセンセーショナルな内容にも見えます。しかし、中身をくわしく見ていくと、違う印象を受けると思います。



この判決は、原告の女性がすでに、国ではなく自治体から生活保護と同等の措置を受けていることを前提に出されたものです。つまりこれは、行政上の救済がすでになされており、裁判所が権利救済をしなければならない必要性が高くなかった事案なのです」



たしかに、女性がすでに生活保護と同等の救済を受けているのであれば、国の「生活保護法」に基づいた保護が、絶対に必要だとまでは言いきれないだろう。



すると、今回の判決は、何を言いたかったのだろうか?



「判決の背景事情を少し説明しましょう。



日本国は難民条約に加入する際に、国民年金法などの社会保障にかんする多くの法令から、『日本国籍でなければならない』という国籍要件を撤廃しました。



しかし、あえて生活保護法だけは国籍要件を残し、行政の裁量によって『実質的に生活保護法と同じ扱いの措置』をするという取扱いをすることにしたのです。



最高裁は今回、『こうした取扱いが是認されている以上、生活保護法を外国人に適用するという解釈はできない』と述べたわけです」



結局のところ、判決は他の形での保護があることを前提としたうえで、外国人は「生活保護法」の対象とならないとしたわけだ。



●最高裁判決の持つ意味は?


現在、外国人に対して行われている生活保護措置への影響はないのだろうか?



「今回の最高裁判決は、日本が難民条約に加入する前提として、外国人に対して『実質的に自国民と同様の生活保護措置を実施している』ことがあったとしています。これはつまり、外国人に対する生活保護措置が『単なる任意の恩恵的措置ではない』ということです。



つまり判決は、外国人が理由なく生活保護措置を拒否されたときは、『生活保護法』に基づいて不服を申し立てることはだめでも、国家賠償請求によって救済を求めることができることを明らかにしたのだと考えます」



湯川弁護士はこのように解説したうえで、「この判決はむしろ、国会に『生活保護法の改正』を迫る、裁判所からのメッセージと受け止めるべきでしょう」と話していた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
湯川 二朗(ゆかわ・じろう)弁護士
京都出身だが、東京の大学を出て、東京で弁護士を開業。その後、福井に移り、さらに京都に戻って地元で弁護士をやっている。なるべくフットワーク軽く、現地に足を運ぶようにしている。
事務所名:湯川法律事務所