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犬の飼い主に税金を課す「犬税」を断念した大阪府泉佐野市――なにが問題だったのか?

2014年08月09日 10:41  弁護士ドットコム

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犬を飼うことにまで税金がかかるのか――。犬の「ふん放置対策」にあてるため、大阪府泉佐野市は法定外目的税として、飼い主に「犬税(仮称)」を課すことを検討してきた。しかし7月下旬、同市の千代松大耕市長は、市議会や総務省の理解を得ることが難しいとして、犬税の導入を見送る考えを表明した。


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報道によると、泉佐野市は、狂犬病予防法に基づいて登録された飼い犬5000匹を対象に、1匹あたり2000円を徴収し、そこで得られた税収1000万円をふん放置対策にあてようとしていた。だが、今年2月から3月にかけて、独自に調査を実施したところ、未登録の犬も含めると、市内に飼い犬が8900匹以上いるとの推計結果が出た。



同市は有識者による検討委員会を発足させ、議論を重ねてきたが、検討委は「狂犬病の登録をしているかどうかで税負担の不公平が生じるうえ、徴税経費の点で市の負担が大きくなる」として、「導入は困難」と結論づけた。



ドイツでは、税金を課すことにより飼い主に「責任感」を植え付けることを目的として、「犬保有税」が導入されている。今回の「犬税」は何が問題だったのだろうか。山本邦人税理士に聞いた。



●「アダム・スミス」の4原則から考える


「税金の一般原則としてよく知られているものに『アダム・スミスの4原則』があります。以下の4点が挙げられます。



(1)『公平の原則』(受け取る利益に応じて税金を負担すること)


(2)『明確の原則』(支払時期、方法、金額が明白で容易であること)


(3)『便宜の原則』(支払時期と方法が便利であること)


(4)『最小徴税費の原則』(税収に対して徴税コストが少ないこと)」



では、「犬税」には、どんな問題があったのだろうか。



「『公平の原則』に照らし合わせると、数あるペットの中で、犬だけに税金をかけるのは不公平ではないかという疑問があります。



また、『明確の原則』の観点からは、対象となる犬をどのようにして漏れなく把握するのかという問題が生じるでしょう。



さらに、『最小徴税費の原則』からすると、税収よりも徴税コストのほうが多額になるのではないかという問題もあります。



ほかにも、『税金を払ったのだからフンを処理しなくてもいい』と考える人が増えるのではないか、税金の負担を避けるために狂犬病の予防注射を受けない飼い主が増えるのではないか、といった問題が生じる可能性があります」



●ドイツでは犬の首に「鑑札」をかけて納税を表示


なるほど、課題は非常に多そうだ。では、これらの課題をクリアするためには何が必要なのだろうか。



「犬税が導入されているドイツは、自己責任の意識が強い国です。たとえば、駅に改札がないので無賃乗車も可能なのですが、違反者には厳しい罰則が科されます。



犬税についても納税時に犬の首に鑑札が付けられるので、納税の有無が一目でわかるようになっています。



日本でも、犬の登録時にICチップなどを付けて数を漏れなく把握する、狂犬病予防注射とあわせて徴収して徴税コストを下げる、違反者には罰則を科す、などの施策によって導入が可能になるのではないでしょうか」



飼い主にはなかなか厳しいアイデアだが、多くの課題をクリアできるのであれば、他の自治体でも「犬税」論議が起きる可能性があるかもしれない。



【取材協力税理士】


山本 邦人(やまもと・くにと)税理士


監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、平成17年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。


事務所名:山本公認会計士・税理士事務所


事務所URL:http://accg.jp


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