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「画像を他から引っ張って、自分の言葉と合体」 梅宮アンナ流「引用」は許されるか?

2014年08月05日 11:51  弁護士ドットコム

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タレントの梅宮アンナさんが7月下旬、画像共有サービス「インスタグラム」に投稿した画像が、物議を醸した。梅宮さんのブログなどによると、別のSNSで画像を見つけた梅宮さんは、メッセージとともに、インスタグラムに投稿したそうだ。


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ネットユーザーから無断利用ではないかと批判されると、梅宮さんはブログで、次のように反論した。「自分の写真だけでは表現しきれず素敵な画像を見つけ引用する。。そして、何より伝えたいのは、世の中には、こんな素敵な絵や言葉があるんだよ!って言いたくてね。。。」「画像を他から引っ張って、自分の言葉と合体させて、皆にメッセージを贈る。。これは少し前からの私のやり方。。新しいメッセージ法です」



一方で、画像の元となった絵を描いたと思われる人は、「転載を知らなかった」とツイッターに投稿している。梅宮さんのインスタグラムへの投稿やブログ記事はその後、削除されたが、梅宮さんの主張は、法的に見た場合、どうなのだろうか。著作権にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。



●「引用」の4つのポイントは?


「著作権法には『公表された著作物は、引用して利用することができる』と書いてあります(同法32条1項)。したがって、もし、画像の利用が著作権法上の『引用』として行われたのであれば、著作権者の許可がなくても、利用はできますね」



雪丸弁護士はこう切り出した。著作権法上の「引用」とはなんだろうか?



「引用は、報道や批評、研究などの目的のために、『一定のルール』に従って、他人の著作物を利用することです」



それでは、著作権法上の「引用」にあたるかどうかの判断基準は?



「見るべきポイントは次の4点です。



(1)利用の目的


(2)利用の方法・態様


(3)利用される著作物の種類や性質


(4)著作権者に及ぼす影響の有無・程度



知財高裁の判決によれば、『他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない』とされています(平成22年10月13日知的財産高等裁判所判決:美術鑑定書事件)」



今回の事例だとどうだろうか?



「この判断基準は、示されてからまだ時間が経過しておらず、各要素を具体的に判断している判例が、まだ十分に積み重なっていないのが現状です。そのため判断が難しいのですが、参考になるように、事案に即して判断してみます」



●利用の目的は?(1)


「まず『利用目的』について見てみましょう。インスタグラムに投稿された梅宮さんのコメントは『心友への想い』を綴ったものですので、この画像はコメントの趣旨に合致したものと一応言えます。



しかしながら、コメントでこの画像に言及しているわけではなく、『この画像を利用する必要性』が高いとは言えません。



梅宮さんがブログに書いた『自分の写真だけでは表現しきれず素敵な画像を見つけ引用する』という発言どおりの利用目的であるとすると、それは他人の作品の魅力に『ただ乗り』するものとも考えられます。保護すべき目的とはあまり言えないでしょう」



●「何」が「どんな風に利用」されたのか?(2)(3)


「今回、利用されたのはカラーイラスト1点で、その全体が使われているようです。もともと、今回のようなイラストの場合、部分的に利用するというよりは、全体を利用するという形になりやすいものではあります。



しかし、出所明示がないのは問題です。引用には、出所を明示することが義務付けられています(同法48条1項1号・3号)」



●著作権者におよぼす「悪影響」は?(4)


「問題のイラストはもともと、絵を描いた人(著作権者)が自身でネット上のpixivというサイトに投稿し、公開したものだったようです。



また、著作権者が、今回の画像について、『個人利用でしたらご自由にどうぞ』とpixiv上で表明している点も考慮されるべきでしょう。



こうした点から考えると、今回の梅宮さんの利用で、著作権者に大きな不利益が生じたとは言えないように思います」



ポイントとなる点をみてきたわけだが、結論としては、どうなるだろうか。



「以上の点を総合考慮すると、引用は『成立しない』と判断される可能性のほうが高そうです。しかし、かなり微妙な事案です。



『著作権者に及ぼす影響の有無・程度』を重視すれば、引用成立を認めるという結論も十分有り得ると思います」



雪丸弁護士はこのように話していた。



裁判所が新しい判断基準を示してから、まだ時間が経っていないこともあって、専門家でも断言できない部分があるようだ。これからの時代の「引用」について、裁判所がどのような判断を下すのか、注目していく必要がありそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
雪丸 真吾(ゆきまる・しんご)弁護士
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師。2014年2月、『引用』に関する書籍『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』第3版(中央経済社)を出版した。
事務所名:虎ノ門総合法律事務所