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職場で仕事を与えられない「社内ニート」 会社に「仕事をくれ!」と要求できるか?

2014年08月02日 12:21  弁護士ドットコム

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せっかく出社しても、満足な仕事が与えられず、机に座って暇つぶしばかり。会社に勤めていても、やることがない「社内ニート」や「オフィスニート」とも呼べる人たちが、インターネットの掲示板で悩みを打ち明けている。


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「社内ニート」には若い人も含まれている。このままでは人脈もスキルも得られないまま、いずれは「リストラ」が待っているかもしれない。ある入社1年目の男性は、売上確認や伝票の作成など事務を担当しているが、やるべきことは午前中に全部終わってしまうという。男性は「意外としんどい」「なんで俺を採用したの」とぼやいている。



「楽で何もしなくていい」と満足しているならともかく、「ちゃんと働きたい」と思っているのに「社内ニート状態」になってしまった場合、どうすればいいのだろうか。古金千明弁護士に聞いた。



●労働者には、「仕事をくれ」と要求できる権利はない


「労働契約上、従業員は、会社に対して、労務を提供する義務を負っています。



一方、『仕事をくれ』と要求する従業員の権利(就労請求権)は、原則としてないと考えられています。



もちろん、仕事の割り振りについて、従業員が会社と任意に交渉をすることは可能です」



法的な権利がないということは、「仕事をくれ」という交渉に会社が応じなくても問題はない?



「はい。給料が支払われている限りは、法的な問題は原則として生じません」



●「腕が鈍る」ケースは問題


社内ニートは、会社から交渉拒否されたら、どうしようもないということか。



「ただし、例外があります。職務内容を限定して雇用されたのに、入社後に異なる職務を担当させられた場合などが当てはまります。



たとえば、『通訳』という職種で雇われたのに、一般事務しかさせてもらえないというケースなどが考えられるでしょう。



また、特殊な技能や専門知識を有する職種について、不就労による技能や熟練の劣化を防止する必要がある場合です。調理人、職人さんなど『継続して使わないと腕が鈍る』というような職種が当てはまる可能性があります」



こうした場合なら、「約束どおりの仕事をさせろ」と、労働契約に基づいて要求できるということだ。



●地道に自分の能力をPRしよう


それでは一般職で採用され、危機感を抱いている「若手社内ニート」はどうすればいい?



「そうした若手が、社内ニート状態から脱するには、地道な『社内営業』などで、能力を会社に認めてもらうよう努力を継続することが現実的でしょう。



社内に労働組合があるなら加入して、団体交渉の中で仕事の割り振りについて会社と交渉するという方法もありえます」



くすぶっている若手にとっては、長い道のりにも感じる。



「会社は営利企業です。合理的な判断ができる会社なら、有用な人材を遊ばせておくことの不合理さに気づくでしょう。逆に会社が、そうした合理的な判断をできないようであれば、その会社に在籍し続けるのか、新しい仕事を探すのか、そこは、ご自身の判断に委ねられる問題です」



自分が何をしていても、時間だけは平等に過ぎていく。社内でこのまま頑張るのか、どこかで見切りをつけるのか・・・。運悪く、こういう状況に陥ってしまったら、難しい決断を強いられることになりそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
天水綜合法律事務所・代表弁護士。個人から法人(IPOを目指すベンチャー企業・中小企業、上場企業)に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は、企業法務、労働問題、M&A、倒産・事業再生、一般民事(離婚・男女関係含む)。
事務所名:天水綜合法律事務所