「We LOVE 麻衣」とメッセージが書かれたケータハムのリヤウイングエンドプレート 7月26日土曜日。ハンガロリンクのパドックを歩いていると、傍らから筆者の名前を呼ぶ人物が現れた。その方は「麻衣」さんの関係者だと語り、少しお話がしたいと言って、近づいてきた。
実は「麻衣」さんに関するニュースの第1報(7月25日「可夢偉の金曜:新スポンサー「We LOVE 麻衣」?」)を読んで、麻衣さん本人ははとても困惑していたという。純粋に可夢偉を応援したいという気持ちでスポンサーしたにも関わらず、事実と違った報道がされたためだ。それは「ケビン・ギオベシとの契約に何か関係があるのかもしれない」という部分や、「ネットショップではないか」という報道である。
この事実が正しくないことは、第2報として配信した7月26日の「可夢偉の金曜2:麻衣さんは実在の日本人」でも明らかにした。そこで、この記事を読んだ「麻衣」さんが自らの関係者を通して直接筆者にコンタクトし、自分の思いをその関係者に代弁してもらう形で告げた方が良いと判断したのだという。
その麻衣さんの関係者によれば、「彼女は現在22歳。“麻衣”という名前とは別な名前で、音楽活動をしています。ユニットのボーカルです」と言う。したがって、ここからは彼女のことを「麻衣」さんとは呼ばず、彼女と呼ばせてもらうことにする。
彼女が可夢偉選手を応援するきっかけとなったのは、2011年の日本GPのことだった。「イギリス人の音楽プロデューサーを通してF1日本GPを鈴鹿サーキットで見て感動し、翌年はマレーシアGPと再び日本GPに観戦に行ったのですが、表彰台を獲得した可夢偉選手に対するスタンドの応援がまるでコンサート会場のように一体感がある盛り上がりとなっているのを見て、とても感動した」のだという。
その可夢偉が2年ぶりにF1に復帰し、再び鈴鹿を走るのを楽しみにしていた彼女だが、7月にチームオーナーが交替。チームの存続が危ぶまれているというウワサを聞いて、可夢偉選手の去就を心配した彼女が少しでも可夢偉選手が所属するチームをサポートしたいと、父親に相談。今回のスポンサー活動となった。
では、なぜ父親の企業名を出さないのか。それについては、その企業は日本人ならだれでも知っている有名企業で、かつてF1のスポンサーをしていた時代にいらぬ風評被害を受けた苦い経験を持っているため、今回は頑に匿名でのスポンサーに固執したという。
また、同じ日本人同士なのだから、ケータハムではなく直接可夢偉をスポンサードすればいいのではないかという問いかけに対しては、「彼女も歌手なので、ファンとの間に一定の線引きをしたい。さらに常々、可夢偉は『プロのドライバーとして持参金を持ち込みたくない』と言っていたので、彼女としては可夢偉選手にお金を出すのではなく、チームをスポンサーする道を選んだ」という。
そして、最後にその関係者は「彼女は今年、鈴鹿で再び可夢偉選手の走りを見られることを楽しみにしています。その時はぜひ彼女を可夢偉選手に紹介したい」と語った。
彼女の夢は、今日本人の夢として、鈴鹿に向けて前進し始めようとしている。
(尾張正博)