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発泡酒「極ZERO」が売れすぎると政府が困る? 「酒税」見直しにつながるのか

2014年07月26日 13:21  弁護士ドットコム

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「極ZERO(ゴクゼロ)」、発泡酒として再出発――。サッポロビールは7月中旬、第3のビールに該当しないおそれがあるとして出荷停止していた「極ZERO」を、発泡酒として再発売した。第3のビールから発泡酒への変更は「異例の出直し」として話題となっているが、酒税の見直し論議を招く可能性もある。


【関連記事:サッポロ「極ZERO」が「第3のビール」から「発泡酒」へ変更ーー何が違うのか?】



サッポロビールのリリースによると、同社は国税当局から適用税率を確認するための情報提供を求められたことを受けて、5月下旬の製造分から出荷を停止した。その後、一部の製造方法を見直して、発泡酒として再発売した。第3のビールから発泡酒への変更に伴い、酒税がアップしたため、350ml缶で約20円の値上げになるというが、人気にかげりはないようだ。



しかし、第3のビールや発泡酒が売れると、そのあおりで酒税の高いビールが売れなくなり、税収が減ってしまう恐れがある。報道によると、麻生太郎財務相は再発売の当日、「ビールの味がするものがえらい売れている。(酒税の見直しを)検討してもらわないといけない」と発言した。はたして、発泡酒や第3のビールの税率が引き上げられる可能性はあるのか。酒税にくわしい中野雅仁税理士に聞いた。



●ビールと発泡酒では「酒税」が約50円も違う


「サッポロビールは今回の酒税の税率適用区分に関して、いったん自主的な修正申告を行うことにしたようです。引き続き検討を続けるようですが、金額にして116億円を特別損失として計上するとのことでした」



経営への影響は大きそうだ。どうして、こんな問題が発生したのだろうか。



「酒税の税率は、成分や製法によって異なっているからです。つまり、ビールのような味がするけれども、実は成分や製法が異なれば、ビールより酒税を安く抑えられるわけです」



ビールは好きだけど、少しでも安いものを買いたいという消費者は多い。それが発泡酒や第3のビールの人気に拍車をかけている。ビールと発泡酒、第3のビールで酒税はそんなに違うのだろうか。



「たとえば、350mlだとビールにかかる酒税は77円です。麦芽50%以上の発泡酒はビールと同じ77円ですが、麦芽25%以上50%未満になると約62円に下がります。そして、麦芽25%未満の発泡酒は約46円、第3のビールは28円の酒税となっています」



ビールと、第3のビールで約50円も違うとは・・・。「極ZERO」の場合はどうだったのだろう。



「極ZEROの場合だと、これまでは第3のビールとして28円でした。しかし、再発売されたものは、麦芽25%未満の発泡酒という区分で約46円となります。税金の差額約18円が新価格に含まれていることになりますね」



●酒税の見直しの可能性はあるか?


今後、税制改正となる可能性はあるだろうか。



「そうですね。実際の税制改正には至っていませんが、政府が昨年末に発表した税制改正大綱の中で、すでに『検討事項』としてマークされています。



簡単に言うと、『ビール類の税率が違うので、製品開発や販売数量に影響を与えている。その結果、酒税の減収につながっているので、早めに税率格差を縮小する方向で見直す』という内容です」



となると、値上がりする可能性があるということか。消費者や業界からの反対も予想されるが…。



「のど越しを比べてみれば、現在の税率差は妥当だと思います。しかし、国としては酒税の減収が続いていますので、何とか手を打ちたいところなのでしょうね」



政府の思惑もわからないではない。しかし、庶民の味方である発泡酒や第3のビールの値上がりは避けてほしい、というのが、率直な消費者心理ではないだろうか。



【取材協力税理士】


中野 雅仁(なかの・まさのり)税理士


1971年生まれ。クラウド会計ソフト対応のITに強い税理士。「明るく・楽しく・元気よく」をモットーに中小企業の皆様に幅広いサービスと笑顔を提供中。「資金繰り」「小規模事業者の節税」「開業にあたっての税金の注意点」等をテーマにセミナーを多数開催。


事務所名:税理士法人わかば


事務所URL:http://www.wakaba-tax.com/


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