FIAによって開かれた木曜日の記者会見に出席した小林可夢偉。シーズン中にチームオーナーが変更したことについて、チームの一員としてどう思うかと問われた可夢偉は次のように返答した。
「生き残るためには、仕方がなかった。もし、あの時新しいオーナーが現れなかったら、シーズン最後まで自分たちはここにとどまることはできなかったと思う。多くのスタッフがチームを去って、一人一人のスタッフの仕事は増えたが、生き残るためには正しい選択だった信じている」
可夢偉が記者会見に出席していたころ、ケータハムのガレージではメカニックたちが週末のハンガリーGPに向けて、慌ただしく作業していた。それはドイツGPからスタッフの数が減ったからだけではない。このハンガリーGPからケータハムに新しいスポンサーがついたため、メカニックたちはスポンサーのロゴをマシンに貼っていたのである。しかも、リヤウイングの翼端板にお目見えした新しいロゴには、日本語の文字が含まれていた。
「Forever with Mai」
「Frontier Japan」
「We LOVE 麻衣」(LOVEの「O」はハートマーク)
オーナーが変更する前まで、リヤウイング翼端板のこの位置には、「GE」(ゼネラル・エレクトリック)のロゴがあった。その後、このロゴが外され、前戦ドイツGPまで空白になっていたが、今回のハンガリーGPから、新しいスポンサーのものと思われる3行の文字が貼られるようになった。しかし、そこには、企業名らしきものが見当たらない。広報に確認すると、「新しいスポンサーというだけで、我々もそれ以上は聞いていない。ただし日本の企業であることは間違いない」という。
別のチーム関係者によれば、「このスポンサーはネットショップだと聞いている」ということだが、インターネットで確認する限り、その名前はいずれも見当たらない。さらに「このスポンサー獲得に関しては、新しくゼネラルマネージャー兼チーム副代表となったマンフレッディ・ラベットが動いていた」という。
ラベットと言えば、7月20日のGP直送でも既に報じたように、ハンガリーGP開幕直前の7月23日に2人目育成ドライバーとして、ケビン・ギオベシ(イタリア)と契約したことを発表したが、それもラベットの仕事だった。それらの情報を総合すると、このロゴはギオベシの持ち込みか、あるいは新たな育成ドライバー獲得に向けた動きかもしれないということだ。
新しいロゴが貼られたリヤウイングだが、技術的なスペックとしてはニューパーツではない。それでも、可夢偉は初日のフリー走行でマルシアの2台とチームメートを上回る19番手を記録した。これは第6戦モナコGPの初日17番手に次ぐ好位置での発進。ハンガロリンクは「ガードレールのないモナコ」と言われ、ドライバーの経験と腕が試されるコース。もし、新しい企業が日本のスポンサーだとしたら、チームだけでなく、日本人として可夢偉へのサポートも続けてくれることを願う。
(尾張正博)