今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。ドイツGPの週末を通して22人ドライバーのなかから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視してチェック。
(最高点は☆☆☆☆☆5つ)
☆
ケビン・マグヌッセン
インフィールドを駆け抜ける彼のMP4/29がバトンとは全然違って映った。新リヤウイング効果によってダイナミック・ダウンフォースが増し、その分、アクセルをガツンと踏み込む。予選セクター3タイムは3位(!)。乗れていただけに決勝1コーナー、マッサとの絡みが惜しい。
☆☆
エイドリアン・スーティル
金曜は今年ベスト(FP1・10位)、猛暑路面で“オーバーステア傾向"になっても“オーバー好み"なので平気だ。やっと入賞かと思えたが土曜からトラブルが続き、今年10戦でなんと5度目リタイアだ。
ジェンソン・バトン
ソフトで31周目から“最長30周スティント"をカバー、ハミルトンともみ合いながら我慢強く8位に。趣味のトライアスロン的な持久力を見た(来季契約をめぐりR・デニスさんとの冷えた関係が気になるが)。
小林可夢偉
「消防隊長カムイ」。イギリスGP“忍者的回避"に続き、懸命に火消し役を演じたFP2。周回遅れシーンでしか映らない“対マルシャ"との烈しい攻防、いったんはビアンキの前に出るも相手はチルトンに。同時ピットインでクルーたちも健闘、可夢偉の気迫がメカたちを奮起させた(これをコストカットしか考えない首脳陣は理解できるのだろうか)。
ルイス・ハミルトン
彼とW05のスピードなら、焦らなければ2位は確実と予測。が、メンタル面でその悪い癖が出てライコネンとバトンに不用意な接触、そのダメージが終盤に響き3位。だがウイング空力性能激減でも最速ラップを叩きだす爆発力が、ウイナーとは違う彼のレース・キャラクター。
☆☆☆
ニコ・ロズベルグ
隣のグリッドにまたチームメイトはいない。9位、6位、ここでは20位、つまり最近3戦は「ゆとりレース」続き。FRIC外しの新セットアップ(ブレーキ系含む)をエンジニアと徹底研究した努力が、この結果をもたらした。
ニコ・ヒュルケンベルグ
ピンチの連続を乗り越え10戦連続入賞。パワーユニット機能が一時低下、コンディション変化によるタイヤ変調もなんのその。7位4点ゲットでフォース・インディアはマクラーレンを抑えランク5位堅持。
☆☆☆☆
セバスチャン・ベッテル
チームメイトの前でゴールしたのはこれが今年初めて(両者完走GPで)。「ルノーPUアップデートは期待外れ」と批判するが、低いギヤの低回転域からのアクセリングがリカルドとは異なる。それでも地元で意地の4位へ。
☆☆☆☆☆
ダニエル・リカルド
スタートダッシュが劣るマシンの弱みにつけ込まれ、1コーナーで接触回避のオーバーラン。5→15位転落後にひたすら追い込み、終盤演じたアロンソとの“スマート・バトル"は秀逸だった。
バルテリ・ボッタス
彼はまだF1の2年生、それを忘れさせるくらい巧い。端的に言うとコーナー出口で見せる滑らかなトラクション・コントロールだ。それが今のFW36とぴったりかみ合い、エンジニアたちも驚くパフォーマンスとなっている。3戦連続表彰台で実力を証明、同じ89年生まれのリカルドとはタイプが対照的なのが面白い。質実剛健なバルテリ……。
☆☆☆☆☆+L
フェルナンド・アロンソ
「無冠の帝王」というフレーズが06年の2連覇後、7年もない彼にぴったりだ。パワーユニットでもマシンでもなく“戦略"やタイヤデータでもなく、コース上でベストプレイを出しきるのが真の戦うレーサー。今年10戦でアロンソがいなかったら、F1は今世紀最も退屈なシーズンになっていただろう。それ故に今回はスペシャルの意味で五つ星以上(+L)をアロンソにおごる。
☆なし
他11人
(今宮純)