メルセデスのルイス・ハミルトンは、ドイツGPでエイドリアン・スーティルのマシンがコース上でストップした後、セーフティカーが出動しなかったことに驚き、マーシャルたちに事故が起きないかと不安でたまらなかったと語った。
48周目の最終コーナーでスーティルはスピンし、コースの真ん中にクルマが止まってしまった。FIAはセーフティカーを出動する必要はないと考え、マーシャルたちはクルマが通過していく中、タイミングを見計らってコースを横切り、ザウバーのマシンをコース外まで押し出した。
ハミルトンは1977年の事故のことを考え、非常に心配したと述べている。1977年南アフリカグランプリで、トラブルでコース脇に止まったレンツォ・ゾルジのシャドウから出た火を消そうとマーシャルがコースを横切って駆け寄り、そこに通りかかったトム・プライスのシャドウにひかれて死亡、プライスもマーシャルが持っていた消火器が頭に当たって即死した。
「マーシャルのことが本当に心配だった」とハミルトン。
「あのコーナーはかなりのスピードに乗って回るのに、すぐ近くにマーシャルが立っているんだ。こんなに近かったのはここ最近では記憶にない」
「ベッドフォードのドライビングスクールに行っていたころ、(トム・プライスの事故の)ビデオが流れているのを見た。何年も前の出来事で、クルマがコース上で止まり、マーシャルがコースを横切って駆け寄り、そこに来たクルマにヒットされるという事故だ。その事故のことが頭に浮かんだよ」
「もちろんあのストレートを全開で走っているわけではなかったけれど、マーシャルが心配だった。誰もケガをしないで幸運だった」
2位のバルテッリ・ボッタスを追っていたハミルトンとチームは、この事故の際にセーフティカーが出動すると予想し、予定より早めにピットインを行った。
「セーフティカーが出動するというのにステイアウトしたらギャンブルになる」とハミルトンはSky Sports Newsに対して語った。
「実際、セーフティカーは出動すべきだった。いったいどうして何周もコースの真ん中にクルマを置きっぱなしにするなんてことができるんだ?」
フェラーリのフェルナンド・アロンソは、自分のレースの状況においてはセーフティカー出動はありがたくなかったものの、安全面を考えればあの場合は当然セーフティカーを出すべきだったと考えている。
「僕らとしてはセーフティカー出動は望ましくなかった。あの時点で残りは17周、スーパーソフトに換えて17周走り切るというのはきつい」とアロンソ。
「でも正直に客観的に考えて、普通ならセーフティカーが出るだろうと考えていた。フロントウイングの破片がコース上に落ちているためにセーフティカーが出動する場合もある。なのにあのときはクルマそのものがコース上に止まっていたのに、セーフティカーが出なかった」
「驚いたよ。でも出さないという判断をしたのは、リスクなく安全にクルマを動かせると思ったからなんだろう。僕はその場面を見ていなかったけれど、実際に危険がなかったのならいいんだけど」