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『F1速報』のドイツGP決勝分析:まだまだ遠い、メルセデスの影……

2014年07月21日 11:20  AUTOSPORT web

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戦前はウイリアムズが肉薄すると思われたが、レースがスタートすると、ロズベルグの逃走劇。影をも踏ませぬ速さと強さを見せつけた
懸念された雨もなく、終始ドライコンディションで行われた今年のドイツGP。戦前は「ニコ・ロズベルグとウイリアムズの接戦になるのでは?」と予想していましたが、終わってみればロズベルグの圧勝でした。

 ロズベルグは最終的には2位のバルテリ・ボッタス(ウイリアムズ)に20秒の差を付けてのフィニッシュでしたが、本来ならばもっと大きな差がついてもおかしくなかったと思われます。というのも、ボッタスのペースを見て、自分のペースをコントロールしていた様にも思えるからです。ウイリアムズが単独2番手チームの地位を確固たるものにしつつあるのは間違いありませんが、FRICがあろうがなかろうが関係なく、まだまだ「銀色のマシンは速い」ということです。

 ただ、最後尾から追い上げてきたルイス・ハミルトンは、ボッタスの背後に迫るところまで行ったものの、ついに交わすことはできませんでした。もちろん、ウイリアムズのトップスピードの速さに封じられた部分もありますが、それより第2スティントが短かったことが、最も大きく影響したように思えます。

 ハミルトンはレース後のコメントで、「(ジェンソン)バトンと接触したことで左のフロントウイングが壊れ、左フロントタイヤのデグラデーションが大きくなった」という旨の発言をしています。ハミルトンがバトンと接触したのは30周目。この後も走行を続けますが、第2スティントをわずか16周で終わらせ(第1スティントは26周)、42周目に2回目のピットストップを実施しています。ハミルトンは「デグラデーションの影響で、2ストップから3ストップ作戦に変更せざるを得なかった」と言っていますが、ラップタイムを見る限り、そのような傾向は見られず、ちょっと不可解です。

 もし仮に第1スティントと同じ周回数(つまり26周)走っていれば、残り15周というところで、ボッタスに7秒かそれ以上の差を付けてスーパーソフトタイヤに交換できたはず。最終的にはコース上で抜かねばならないことに変わりはありませんが、もっとタイヤが新しい状態で勝負を挑むことができたはずで、結果は変わっていた可能性もあります。

 ちなみに接触の一件で、ハミルトンは「バトンはいつも通り譲ってくれると思った」と語り、バトンは「譲るわけないじゃないか!」と応戦しています。そりゃ、バトンの言うとおりですよね……。

 前回のイギリスGPで激しいバトルを見せてくれたレッドブルのセバスチャン・ベッテルとフェラーリのフェルナンド・アロンソは、今回も4位を争いました。レース終盤、タイヤを履きかえた直後のアロンソがダニエル・リカルドを抜くのに手間取ったため、ベッテルが4位を確保しましたが、こういう状況に陥ったのには大きな要因があります。

 今回、フェラーリのデグラデーションはが非常に大きく、ソフトタイヤでも1周あたり0.2秒程度のペースダウンを強いられていました。当然スーパーソフトでのデグラデーションはさらに大きいはず。アロンソは55周目に最後のピットストップを行いますが、これ以上前にスーパーソフトに換えてしまえば、残りの周回を走り切ることはできない……チームはそう判断したのでしょう。

 実はもう2周でも前にスーパーソフトに交換していれば、アロンソはリカルドの前でコースに復帰できていました。今回のピットストップ時のロスタイムは18秒程度、作業時間を3秒としても、21秒差あればポジションを譲ることなくタイヤ交換できるわけです。53周目のアロンソとリカルドのタイム差は22.993秒でしたから、この時点でピットインしていれば、前を塞がれることはなかった。ただ、その2周を早めることで、最終スティントでのペースが極端に落ちてしまう可能性があったのです。

 しかも、アロンソはもうひとつの不安要素を抱えていました。それは燃費です。アロンソのコメントによると、燃料は本当にギリギリで、最終ラップは燃料をものすごく節約して走り切ったということ。そう考えると、アロンソにとって5位という結果は、今回望みうる最高の結果だったと言えそうです。

 なお、予選が速かったマクラーレンも、今回デグラデーションに苦しみました。マクラーレンのデグラデーションは、前述のフェラーリ以上。そのため、レースペースは非常に遅く、上位進出は叶いませんでした。このレースペースが改善されない限り、マクラーレンは今後もフェラーリやレッドブルと争うのも難しいでしょう。

 メルセデスAMGの圧勝だったとはいえ、各所でバトルが展開され、見所の多かったドイツGP。今週末のハンガリーGPは、いったいどんなレースになるのでしょうか? 舞台となるハンガロリンクは、シリーズ通しても最も低速の部類に入るサーキット。そのため大きなダウンフォースと、トラクション性能が求められます。メルセデスAMGの優位は揺るがないでしょうが、次に来るのはまたもウイリアムズか? コース特性から考えれば、レッドブルやフェラーリにも逆転の可能性があるかもしれません。
(F1速報)